◆発表のポイント
- テロメライシン(OBP-301、Suratadenoturev)は、岡山大学で開発された抗がんウイルス製剤。
- がん細胞のみで増殖して細胞死を誘導するが、正常細胞では増殖せず安全性が保たれる。
- テロメライシンは放射線によるDNA修復を阻害し、放射線治療と強力な併用効果を示す。
- 米国および日本で第I相臨床試験を実施し、その安全性と有効性が確認されている。
- 食道がんが多い日本の17施設で第II相臨床試験を実施し、高い臨床的完全寛解率が得られた。
- 岡山大学発ベンチャー オンコリスバイオファーマ株式会社から製造販売承認申請を実施。
- アカデミアからの創薬シーズが市場に出ることは、社会的に大きなインパクトを持つ。
岡山大学学術研究院医歯薬学域 消化器外科学分野の藤原俊義教授、黒田新士准教授らの研究グループが食道がんに対して開発を進めてきた腫瘍溶解ウイルス製剤「テロメライシン」を、岡山大学発バイオベンチャー オンコリスバイオファーマ株式会社(以下、オンコリス社)が厚生労働省に医薬品製造販売承認申請を行いました。
岡山大学で開発されたテロメライシンの臨床試験は、2006年から米国食品医薬品局(FDA)の承認のもと、米国での安全性を確認する第I相臨床試験から始まりました。その後、基礎研究でテロメライシンが放射線治療の効果を強める現象が明らかとなり、2013年からは岡山大学で外科手術や抗がん剤治療などの標準治療ができない食道がん患者にテロメライシンと放射線治療を併用する臨床研究を実施しました。また2017年からは、岡山大学と国立がん研究センター東病院で同様のプロトコールでオンコリス社が第I相企業治験を行い、2020年からは岡山大学病院を含む食道がん治療のハイボリュームセンター(全国17施設)での多施設共同で第II相企業治験が実施されました。
テロメライシンは、2019年に独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)による迅速審査が受けられる「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されており、今回、PMDAと検討を重ね第II相臨床試験での有効性が確認されたことから、厚生労働省に医薬品製造販売承認申請を行いました。なお、テロメライシンの販売は、オンコリス社と販売提携契約締結を結んでいる富士フイルム富山化学株式会社が行う予定で、現在、準備を進めているところです。
岡山大学で開発された「テロメライシン」は、アカデミアからの創薬シーズが市場に出るという社会的なインパクトだけではなく、低侵襲で優しい治療薬として食道がんの患者さんにとっても大きな福音となることが期待されます。
◆研究者からひとこと
| 長らく岡山大学を中心に開発が進んできた国産の抗がんウイルス製剤テロメライシンの薬事承認申請ができたことをたいへんうれしく思います。臨床試験では、約半分の患者さんで局所の食道がんが消失しました。実臨床でも、やさしい治療を待つ食道がん患者さんに届くことを願っています! | ![]() 藤原教授 |
<詳しい内容について>
厚生労働省に標準治療が難しい食道がんに対する腫瘍溶解ウイルス製剤「テロメライシン」の医薬品製造販売承認申請を実施
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域 消化器外科学
教 授 藤原 俊義
(電話番号)086-235-7255 (FAX)086-221-8775
