国立大学法人 岡山大学

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植物がストレス条件でも光合成を維持する新たな仕組みを解明― 熱ショックタンパク質HSP70と膜リモデリング分子VIPP1が連携 ―

2026年01月29日

◆発表のポイント

  • 光合成の光エネルギー変換反応は、葉緑体内のチラコイド膜という特殊な膜構造の上で行われます。
  • 本研究は、チラコイド膜の形成・修復を担う VIPP1 が、熱ショックタンパク質HSP70ファミリーに属する cpHsc70-1 と相互作用することを明らかにしました。
  • この相互作用は、高温などのストレス下でチラコイド膜を動的に再編成し、光合成を維持するために必須であり、植物の環境適応性を高める新たな分子基盤を示しています。

 植物の光合成は、葉緑体内に存在する「チラコイド膜」と呼ばれる膜構造の上で行われています。チラコイド膜には光合成に必要なタンパク質複合体が集中的に配置されており、その構造が光合成効率を左右します。
 しかし、異なる日照や温度などの環境ストレス下では、光合成のタンパク質だけでなく、このチラコイド膜自体も損傷を受けたり、再構成されたりする必要があります。植物がストレスに耐えるためには、損傷したタンパク質を保護する仕組みと、膜構造を修復する仕組みの両方が必要です。
 岡山大学学術研究院先鋭研究領域(資源植物科学研究所)の坂本亘教授らは、チラコイド膜の形成・修復などの恒常性を担う膜リモデリングタンパク質VIPP1が、熱ショックタンパク質HSP70ファミリーに属するcpHsc70-1と相互作用することを明らかにしました。cpHsc70-1は「シャペロン」と呼ばれるタンパク質機能の制御によりVIPP1集合体の解体と再編成を制御し、チラコイド膜を動的に維持しています。
 この連携機構により、高温ストレス下でもチラコイド膜の構造が保たれ、光合成機能が維持されることが示されました。本研究は、植物が環境変動に適応するための光合成制御の新たな分子基盤を示すものです。
 この研究成果は、2026年1月にアメリカの国際学術誌『PNAS Nexus』に発表されました。

◆研究者からひとこと

光合成を支えるチラコイド膜は、環境条件に応じて常に作り替えられています。本研究は、葉緑体の熱ショックタンパク質が単にタンパク質を守るだけでなく、光合成の足場となる膜構造の維持にも関与していることを示しました。タンパク質と膜という異なる階層の制御が結びつくことで、植物が高温ストレスに適応していることが分かり、生命システムの巧妙さを改めて実感しています。
坂本教授

■論文情報
Chloroplast heat shock protein cpHsc70-1 interacts with thylakoid membrane remodeling protein VIPP1 C-terminal tail and controls VIPP1 oligomer assembly
掲載誌:PNAS Nexus第5巻1号(2026年1月発行)
DOI: 10.1093/pnasnexus/pgaf393
参考論文 Wataru Sakamoto, Thylakostasis: key factors in thylakoid membrane organization with emphasis on biogenesis and remodeling proteins in vascular plants. Plant and Cell Physiology, 66 (11): 1602-1618, DOI: 10.1093/pcp/pcaf098

■研究資金
 本研究は、文部科学省科学研究費・学術変革領域研究(A)「光合成ユビキティ」計画研究および基盤研究(C)の支援を受けて実施されました。また、本研究の一部は、岡山大学RECTORプログラム(生命科学RECTOR国際光合成拠点)に基づき、ドイツ・ミュンスター大学との国際共同研究として実施された成果です。

<詳しい研究内容について>
植物がストレス条件でも光合成を維持する新たな仕組みを解明― 熱ショックタンパク質HSP70と膜リモデリング分子VIPP1が連携 ―


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院先鋭研究領域(資源植物科学研究所)
光環境適応研究グループ
教授 坂本 亘
(電話番号)086-434-1206
(HP) https://www.rib.okayama-u.ac.jp/

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