国立大学法人 岡山大学

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神経性やせ症の家族療法(FBT)に特化した支援AIを開発― 家庭での「支援の空白」を埋める新たな試み ―

2026年01月30日

◆発表のポイント

  • 拒食症に悩む家族の「パートナー」: 家庭で直面する困りごとに24時間いつでも利用できる、家族療法実施支援に特化した生成AIボットを開発しました(私たちの知る限り同種の取り組みとして初)。
  • 専門家評価による「安全性・妥当性」: 専門医らによるテストで、AIの回答の9割以上が「適切で安全」であると判定されました。
  • 支援の空白を埋める技術: 医療者に相談が難しい時間帯などに、AIが家族の味方として相談に対応し、即座に適切な声かけや対処法を提案します。

 「神経性やせ症」は、極端に体重が減り、命に関わることもある深刻な病気です。特に10代の子どもに増えており、若年者の治療では、お父さんやお母さんが家庭での食事を主導して支える「家族療法(FBT:Family Based Treatment)」がもっとも効果的とされています。しかし、毎食時に子どもが激しく泣き叫んだり、食べることを強く拒んだりする中で再栄養を支え続けることは、家族にとって想像を絶する負担です。診察のない夜間や休日、目の前の食事をどう勧めればよいかを悩む家族は多く、治療を諦めてしまうケースも少なくありません。
 そこで、岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)医療情報化診療支援技術開発講座の長谷井嬢教授(整形外科)は、岡山大学病院小児心身医療科と連携し、子どもを支える家族を支援するために、家族療法(FBT)の専門知識を学習したAIチャットボットを開発しました。AIが「医療の空白」を埋めるパートナーとなることで、家族の心の負担を減らし、子どもたちの回復を後押しします。
 このAIは将来的な臨床利用を目指し、2026年2月より段階的に患者さんご家族の試用を経て、システムの精度をさらに高める開発を実施予定です。本開発は、現在強く求められている生成AIの医療応用推進に寄与し、医療を補完するデジタル・トランスフォーメーション(DX)の象徴的なモデルとなります。

◆研究者からひとこと

神経性やせ症の治療において、保護者は『回復を支える最大の味方』ですが、同時にもっとも過酷な状況に置かれています。食卓での激しい葛藤に直面したとき、深夜や休日であっても、すぐに適切な声かけや対処法を提案してくれる存在があれば、家族にとって大きな支援になるのではないかと考え、小児心身医療科と連携して開発しました。本システムは単に情報を与えるだけでなく、日々治療に取り組むご家族の感情に寄り添い、エンパワメント(勇気づけ)を行う独自のアルゴリズムを搭載しています。今後効果実証を行う予定で、診療に利用できるのはまだ先ですが、AIが医療の空白を埋めることで、より多くの子どもたちが家族とともに回復への道を歩めるよう、今後も臨床実装に向けた研究を加速させていきます。
長谷井教授

■研究資金
 本研究は、公益財団法人 三島海雲記念財団、公益財団法人 明治安田こころの健康財団、公益財団法人 橋本財団、JST スタートアップ・エコシステム共創プログラム(PSI2025_S2B71) の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
神経性やせ症の家族療法(FBT)に特化した支援AIを開発― 家庭での「支援の空白」を埋める新たな試み ―


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)医療情報化診療支援技術開発講座
教授(特任) 長谷井 嬢
(電話番号)086-235-7273

年度