国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISHCHINESE
MENU

藻類から高等植物への進化をつなぐ鍵を発見〜ゼニゴケ由来光化学系I-アンテナ超複合体の構造を解明〜

2026年02月05日

◆発表のポイント

  • モデル生物であるゼニゴケから、光化学系I(PSI)–クロロフィルa/b結合タンパク質(LHCI)超複合体の単量体と二量体を単離しました。
  • 岡山大学異分野基礎科学研究所・国際構造生物学研究センターの高性能300 kVクライオ電子顕微鏡 Thermo Fisher Scientific Titan Krios G4(クライオ電子顕微鏡)を用い、PSI–LHCI単量体と二量体の構造を、それぞれ1.94Åと2.52Åという高分解能で解明しました。
  • PSI-LHCI単量体は非常に高い分解能で解析されたため、複合体内部の水分子の配置や励起エネルギーの移動系路を詳細に明らかにすることができました。
  • 陸上植物由来のPSI-LHCI二量体構造を、世界で初めて決定しました。これは、これまでに報告されている緑藻由来の PSI-LHCI超複合体二量体とは異なり、アンテナではなく、PSIコア同士が直接結合する新しい様式で形成されていました。

 光化学系Iは、光エネルギーを利用してNADPHを生成する光合成の重要な複合体です。ゼニゴケMarchantia polymorphaは原始的な陸上植物の一つであり、光合成のしくみや植物の進化を解明するうえで欠かせないモデル生物として知られています。これまで陸上植物の光化学系Iは単量体で存在する構造のみが解明され、それ以外の形態はよく分かっていませんでした。今回、岡山大学学術研究院先鋭研究領域(異分野基礎科学研究所)の蔡弼丞助教(特任)、Romain La Rocca助教(特任)(研究当時。現在は仏国のInstitute of Bioscience and Biotechnology of Aix-marseille(BIAM)所属)、沈建仁教授、秋田総理准教授、学術研究院環境生命自然科学学域の本瀬宏康准教授のグループは、岡山大学異分野基礎科学研究所国際構造生物学研究センターのクライオ電子顕微鏡を用いて、ゼニゴケ由来の光化学系I(PSI)–クロロフィル a/b 結合タンパク質(LHCI)超複合体の単量体と二量体の両方の構造を、それぞれ1.94Åと2.52Åの高分解能で解明しました。単量体については、分解能が非常に高いため、水分子の配置まで明らかにすることに成功しました。さらに二量体の構造から、PsaB/PsaG/PsaH/PsaMと呼ばれるサブユニットが、二量体形成に重要な役割を果たすことが分かりました。また、主要な励起エネルギー移動経路も同定され、単量体と二量体で大きな違いがないことから、二量体は高密度化に寄与している可能性が示唆されました。これらの成果は、ゼニゴケにおけるPSI–LHCI超複合体の構造解明にとどまらず、進化の過程でPSIがどのように変化してきたかを理解する手がかりにもなります。この成果は、2026年2月5日18:00、英国学術雑誌「Communications Biology」のオンライン版に掲載されます。

◆研究者からひとこと

岡山大学に来る前は、ガンや微生物の研究に携わってきましたが、現在は光合成酵素の研究を行っています。今回は、陸上植物のモデル生物であるゼニゴケを用いて、光化学系I超複合体の構造解析を行いました。光化学系Iの進化について、微力ながら貢献できたことを嬉しく思います。
蔡弼丞助教(特任)

■論文情報
論 文 名:Structural study of monomeric and dimeric photosystem I-LHCI supercomplexes from a bryophyte
掲 載 紙:Communications Biology
著  者:Pi-Cheng Tsai, Romain La Rocca, Hiroyasu Motose, Jian-Ren Shen, Fusamichi Akita
D O I:10.1038/s42003-026-09631-w
U R L:https://www.nature.com/articles/s42003-026-09631-w

■研究資金
 本研究は、日本学術振興会特別推進研究(JP22H04916)、基盤研究(B)(JP24K02025)、基盤研究(C)(JP25K08923)と地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)(JPJS00420230010)の支援を受けて実施しました。データ収集には岡山大学コアファシリティー(CEPOU RIIS-n01)の支援を得て、国際構造生物学研究センターのクライオ電子顕微鏡で収集しました。また、本論文は「岡山大学 インパクトの高い国際的な学術誌へのAPC支援」を受けています。

<詳しい研究内容について>
藻類から高等植物への進化をつなぐ鍵を発見〜ゼニゴケ由来光化学系I-アンテナ超複合体の構造を解明〜


<お問い合わせ>
 岡山大学学術研究院先鋭研究領域(異分野基礎科学研究所)
 教授 沈 建仁
 (電話番号)086-251-8502
 (FAX)086-251-8502

 岡山大学学術研究院先鋭研究領域(異分野基礎科学研究所)
 准教授 秋田 総理
 (電話番号) 086-251-8630

 岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域
 准教授 本瀬 宏康
 (電話番号)086-251-7857

年度