◆発表のポイント
- アミノ酸の“右手型・左手型(鏡像異性体)”の違いに敏感な光(キラル光)を、単一の金ナノ構造の中の「分子サイズの一点」に作り出しました。
- 光の到達時間差をわずかに変えるだけで、その光源をON/OFFし、右回り/左回り(キラリティ)を切り替えられることを実証しました。
- 光源のON/OFF制御により、鏡像異性体を識別する超小型・超高速の光デバイスや高感度センシングへの応用が期待されます。
国立大学法人岡山大学学術研究院先鋭研究領域(異分野基礎科学研究所)の三澤弘明教授(特任)は、中国・東南大学および中国・北京大学との国際共同研究により、アミノ酸の“右手型・左手型”のような分子の左右の違いを見分ける光(キラル光)を、分子サイズの一点に作り出し、超高速にON/OFF・反転できることを実証しました。これまで、こうした光の性質を分子サイズの一点に閉じ込め、しかも超高速に切り替えることは技術的に難しい課題でした。本研究の重要なポイントは、単一の金ナノアンテナ内部で生じる光の振動の重なり(モード干渉5))を利用し、従来両立が難しかった「分子サイズの局在」と「超高速な切替」を同時に実現した点にあります。本成果は、2026年2月28日に米国化学会(ACS)の学術誌 ACS Nano にオンライン掲載されました。分子の左右の違い(鏡像異性体)は医薬・材料・生命科学で本質的に重要であり、本技術はその識別や反応制御を、より小さく速く行う基盤となります。今後、超小型・超高速の光スイッチや、キラル分子の高感度センシング、キラル発光制御などへの展開が期待されます。
◆研究者からひとこと
| アミノ酸の“右手型・左手型”のような分子(キラル分子)の左右の違いは、生命科学や医薬にとって本質的に重要です。今回、分子サイズのごく小さな一点に、左右の違いを見分ける光の状態を作り、しかも超高速にON/OFFや反転までできることを示しました。将来は、キラル分子をより高感度に調べる技術や、超小型・超高速に動作する光スイッチなどへつなげていきたいと考えています。 | ![]() 三澤教授(特任) |
■論文情報
論 文 名:Construction and Regulation of a Nanometer-Femtosecond-Scale Spatiotemporally Localized Chiroptical Source in a Single Plasmonic Nanoantenna
掲 載 誌:ACS Nano
著 者:Shuai Zu, Quan Sun, Chunxiang Xu, and Hiroaki Misawa
D O I:10.1021/acsnano.5c15772
■研究資金
本研究は、科学研究費補助金 基盤研究(S)(JP23H05464)およびJSPS Program for Forming Japan’s Peak Research Universities (J-PEAKS) (Grant No. JPJS00420230010)の支援を受けて実施しました。
<詳しい研究内容について>
“分子の右と左”を見分ける光を超高速で切り替え-ナノサイズのアンテナで実現-
<お問い合わせ>
岡山大学 学術研究院先鋭研究領域(異分野基礎)
教授(特任) 三澤弘明
(電話番号)086-251-7874
