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糸状菌由来抗生物質アスコクロリンの誘導体化合物N184によるインターロイキン9産生CD8 T細胞の誘導とその抗腫瘍免疫活性化機構の解明

2026年03月27日

◆発表のポイント

  • アスコクロリン誘導体N184 はCD8 T細胞をインターロイキン9産生細胞へ分化させます。
  • N184 はCD8 T細胞の細胞死を抑制し、インターロイキン9依存性にその寿命を延長します。
  • N184 はCD8 T細胞の免疫疲弊を抑制しインターフェロンγ等の産生を大幅に増加させます。

 岡山大学学術研究院医歯薬学域 代謝免疫制御学講座の 鵜殿平一郎 教授と 西田充香子 講師、免疫学分野の今野なつみ大学院生を中心とするメンバーからなる研究チームは、糸状菌から分離した抗生物質アスコクロリンの誘導体化合物の中から著しく細胞毒性の低い化合物を選別し、その中からCD8 T細胞の寿命を有意に延長する化合物N184の同定に成功しました。CD8 T細胞の刺激培養時にN184を共存させるとインターロイキン9(IL-9)産生細胞へと分化し、寿命が延長すると同時に、免疫疲弊分子の発現を抑制してインターフェロンγ(IFNγ)、インターロイキン2(IL-2)、腫瘍壊死因子(TNFα)の産生を増強し、且つ、抗アポトーシス分子を誘導してCD8 T細胞の細胞死を防ぐことを明らかにしました。
 固形がんと戦うCD8 T細胞は腫瘍に入ると短時間でエフェクター機能と増殖能を失い、抗腫瘍活性を維持できません。N184の寿命延長効果はこの欠点を克服する可能性があるため、現行の免疫チェックポイント阻害薬、CAR-T(カーティ)細胞療法、腫瘍特異的T細胞輸注療法などに応用できる可能性を秘めており、今後の実臨床を見据えた開発研究の成果が期待されます。
 この研究成果は2月19日、British Journal of Pharmacology 誌の電子版に掲載されました。

◆研究者からひとこと

 私たちは2型糖尿病治療薬メトホルミンによる固形がんの免疫治療研究を行ってきました。メトホルミンはAMP-activated protein kinase (AMPK)を活性化して生物学的活性を発揮するとの言説から、メトホルミンよりも1000倍高いAMPK活性を有する化合物が取れたということでNRLファーマ企業様より免疫学教室に持ち込まれたのがN184でした。In vivoで腫瘍増殖を抑制するものの、
 その分子メカニズム解明は難航しました。
 しかし、CD8 T細胞の分化誘導の実験系に乗せることで細胞生存率が上昇する事実が判明し、さらにIL-9産生がその原因である事を突き止めました。それ以降は定石通りに実験を進めて論文投稿に至り、学位申請最終日にアクセプトされ卒業できる見込みになりました。瓢箪から駒という反面、ヒヤヒヤの研究生活でもありました。

 西田 講師 今野 大学院生

■論文情報
論 文 名:Induction of IL-9-producing CD8+ T cells by ascochlorin derivatives
掲 載 誌:British Journal of Pharmacology
著  者:Natsumi Imano, Mikako Nishida, Miho Tokumasu, Weiyang Zhao, Nahoko Yamashita, Heiichiro Udono
D O I:10.1111/bph.70316
U R L:https://bpspubs.onlinelibrary.wiley.com/journal/14765381 

■研究資金
 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(基盤A・18H04033, 挑戦的萌芽・17K19598, 基盤B・24K02326, 研究代表:鵜殿平一郎)、株式会社NRLファーマ、株式会社グリーンコアの支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
糸状菌由来抗生物質アスコクロリンの誘導体化合物N184によるインターロイキン9産生CD8 T細胞の誘導とその抗腫瘍免疫活性化機構の解明


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域 代謝免疫制御学
教授 鵜殿平一郎
(電話番号)086-235-7887
(FAX)086-235-7887

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