視覚記憶の長期持続性~わずかな経験が認知と行動を生み出す~
2026年03月27日
岡山大学
日本赤十字広島看護大学
◆発表のポイント
- 物や人の顔、景色など、私たちは日々膨大な視覚情報を受容しています。本研究は、数秒程度見ただけの視覚情報を、非常に詳細なまま少なくとも3週間は保持できることを実験により示しました。
- 本研究の結果は、言語化困難な感覚的な経験が長期的に記憶として残り続け、その後の認知や行動に潜在的に影響を及ぼすことを示すものであり、人の認知や行動の変容における感覚的な経験の重要性を示すものです。
私たちは常に、視覚情報や聴覚情報などの膨大な感覚情報を受容しながら生活しています。これらの情報はいかに記憶として残り、私たちの認知や行動に影響するのでしょうか。岡山大学学術研究院教育学域の寺澤孝文教授、日本赤十字広島看護大学の益岡都萌講師らの研究グループは、ヒトがわずか数秒程度見ただけの視覚情報を、非常に詳細なまま少なくとも3週間程度の長期にわたり保持できること、そしてわずかな経験により獲得した記憶が我々の認知や行動を自動的に変容させることを実験により示しました。この研究成果に関する論文は、心理学系の国際誌「Attention, Perception, & Psychophysics」に採択され、2025年6月20日よりオープンアクセス論文として公開されています。
本研究の結果は、基礎研究の成果として人間の記憶の頑健性に関するエビデンスを提供することに加えて、我々の日常生活における一瞬一瞬の感覚的な経験の連続が、認知や行動の変容に対していかに重要な要因であるかを示すものです。教育では経験・体験を伴う学習が重要であると言われていますが、「なぜ経験が重要なのか」という問いに対し、本研究の成果は「過去のわずかな経験が現在の認知や行動を生み出す」ことを科学的なデータで示すものです。本研究の成果をもとに、今後は視覚処理における記憶の影響についてさらに研究を進めていきます。
◆研究者からひとこと
| これまでに非常に多くの個別実験を繰り返し、本研究の発表に至りました。岡山大学の学部生の方、大学院生の方を中心に実験に参加してくださった全ての方に心より御礼申し上げます。 | ![]() 益岡講師 |
■論文情報
論 文 名:Implicit effect of visual long-term memory for nonverbal objects on recognition judgment
掲 載 誌:Attention, Perception, & Psychophysics
著 者:Tomoe Masuoka, Megumi Nishiyama, Yuna Tsurusaki, Takafumi Terasawa
D O I:https://doi.org/10.3758/s13414-025-03108-4
U R L:https://link.springer.com/article/10.3758/s13414-025-03108-4
■研究資金
本研究は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」と独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(基盤C・23K02892・研究代表:益岡都萌)の支援を受けて実施しました。
<詳しい研究内容について>
視覚記憶の長期持続性~わずかな経験が認知と行動を生み出す~
<お問い合わせ>
岡山大学 学術研究院教育学域
教授 寺澤孝文
(電話番号)086-251-7714
日本赤十字広島看護大学 看護学部
講師 益岡都萌
(電話番号)0829-20-2855
