国立大学法人 岡山大学

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不安定なタンパク質の凝集問題を解決、基礎研究から診断薬開発までを支える「S-カチオン化」技術の応用

2026年04月08日

◆発表のポイント

  • 独自開発の「S-カチオン化」技術で、従来取り扱いが困難だった不安定で凝集しやすい「天然変性タンパク質」を可溶化・精製し、化学的に安定な状態で取得可能に。
  • S-カチオン化抗原を免疫に用いると、高品質な抗体が取得可能で各種の基礎研究や自己抗体バイオマーカー測定の精度管理が可能に。
  • がん・自己免疫疾患領域に求められるバイオマーカー測定の精度を高めるプラットフォーム技術として、基礎研究から診断薬開発まで幅広い活用に期待。

 岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科博士後期課程の坂口隆偉大学院生、同大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域の宮本愛助教、二見淳一郎教授らの研究グループは、独自開発のS-カチオン化法で、従来取扱いが困難であった天然変性タンパク質を可溶化・精製する技術を確立しました。がん・自己免疫疾患領域では、個々の患者で異なる免疫応答を正確に把握する「プロファイリング」や「モニタリング」が求められており、血液中の自己抗体が重要なバイオマーカーとして注目されています。しかし、標的となる自己抗原の多くは「天然変性タンパク質」に分類され、不安定で凝集しやすいため、高精度な測定系構築の障壁となっていました。本研究では、S-カチオン化法で精製した自己抗原をウサギに免疫すると、高品質な抗体が取得できることが確認されました。これらを陽性コントロールとして、多項目の自己抗体測定パネルで測定誤差20%以下の高い再現性と信頼性が確認され、臨床研究で利用できることが実証できました。天然変性タンパク質は多くの生命現象や疾患に関与する重要な創薬ターゲットです。本手法は未解明な点が多い天然変性タンパク質に対する強力な研究ツールとなるだけでなく、高精度な次世代診断薬の開発を加速させる画期的な基盤技術となります。
 本研究成果は、2026年3月4日付で学術雑誌「Bioconjugate Chemistry」誌に掲載されました。

◆研究者からひとこと

 タンパク質の変性や凝集は、研究や産業利用における重大な課題です。私たちは、独自開発の化学修飾による可溶化技術を解決策として提案し、社会実装を目指しています。タンパク質工学の力で、自己抗体バイオマーカーによる精密な個別化医療の実現を目指しています。
左から二見教授、坂口大学院生、宮本助教

■論文情報
論 文 名:A Cysteine-Specific Cationization Strategy for Versatile Antibody Production against Intrinsically Disordered Proteins
掲 載 誌:Bioconjugate chemistry
著  者:Ryui Sakaguchi, Ai Miyamoto, Rikako Kutsuma, Takeru Mori, Daichi Nakashima, Mirei Masui, Tomoko Honjo, Midori Futami, Mariko Morii, Toshiyuki Oshiki, Junichiro Futami
D O I:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.bioconjchem.6c00001

■研究資金
 本研究は、日本学術振興会(JSPS)の科学研究費助成事業(22H01881, 24K10913, 23K14923, 23K07161, 24K23389)、日本血液学会奨励費、特別電源所在県科学技術振興事業補助金、および科学技術振興機構(JST)の大学発新産業創出プログラム(START)(JPMJST1918)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
不安定なタンパク質の凝集問題を解決、基礎研究から診断薬開発までを支える「S-カチオン化」技術の応用


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域バイオ・創薬部門(工学部 化学・生命系)
教授 二見 淳一郎
(電話番号)086-251-8217

年度