◆発表のポイント
- 光触媒で生じるプラスの電荷(正孔)が、材料によって深いトラップ状態に捕捉される場合と、浅い状態にとどまる場合があることを、世界で初めて Type A/B/C の3つに分類し、統一的に説明しました。
- 可視光で働く光触媒では、構成元素の電子的性質により正孔が深いトラップ状態に落ちにくく、結晶欠陥があっても活性が維持される「欠陥耐性」が生まれることを明らかにしました。
- この成果は、太陽光の大部分を占める可視光を利用し、かつ、クリーンエネルギー分野で注目される光触媒の高活性化と長寿命化を実現する明確な材料設計指針を与えます。
岡山大学学術研究院先鋭研究領域(異分野基礎科学研究所)の山方啓教授、信州大学のJunie Jhon M. Vequizo特任助教、堂免一成特別栄誉教授らの研究グループは、可視光で動作する光触媒において長年謎であった「正孔(電子の抜けた状態)の振る舞い」を解明しました。
本研究では、時間分解過渡吸収分光法※5)を用いて光照射により生成した正孔の動態を詳細に解析し、可視光応答型光触媒では、正孔がバンド端※6)近傍にとどまる「浅いトラップ状態」を形成することを明らかにしました。この状態では、正孔の過度な局在と失活が抑えられるため、高い反応性を長時間維持できると考えられます。
一方、従来の紫外光応答型光触媒では、正孔は格子歪みにより強く局在して深いトラップ状態を形成することが性能低下の一因であると考えられてきました。
今回の研究により、可視光応答型光触媒で長年未解明であった「トラップ正孔がバンド端近傍に鋭い吸収ピークを示す」現象は、アニオンの高い分極性や軌道混成によって格子緩和が抑制されることで生じることを初めて明らかにしました。
さらに、このような電子状態は、欠陥が存在しても深いトラップを形成しにくい「欠陥耐性」をもたらし、高い触媒活性の維持につながることも示されました。
本研究成果は、光触媒の性能を支配する光励起キャリア挙動の理解を大きく前進させ、高効率かつ長寿命な光触媒材料設計の新たな設計指針となるものです。
本成果は、米国化学会誌『Journal of the American Chemical Society』に2026年3月26日付け(現地時間)でオンライン掲載され、同誌2026年4月22日号のカバーアートにも採用されました。
◆研究者からひとこと
| 2012年に可視光応答型光触媒のトラップ正孔がバンド端に吸収を与えることを発見して以来、その理由をずっと考えてきました。 今回、これまでに測定してきた数多くの材料のデータを比較する中で、トラップ正孔の吸収が3つのパターンに分類できることを見いだし、その起源を統一的に説明できました。さらに、この知見から、可視光応答型光触媒には、欠陥があっても性能が落ちにくい「欠陥耐性」が本質的に備わっていることも分かりました。 この発見は、光触媒材料の設計指針を大きく前進させる可能性があります。1日も早い光触媒による水素製造の実用化を期待しています。 | ![]() 山方教授 |
■論文情報
論 文 名:Shallow Hole Trapping and Intrinsic Defect Tolerance in Visible-Light Photocatalysts
掲 載 誌:Journal of the American Chemical Society
著 者:Akira Yamakata, Junie Jhon Vequizo, Kazunari Domen
D O I:https://doi.org/10.1021/jacs.6c00026
U R L:https://doi.org/10.1021/jacs.6c00026
■研究資金
本研究は、岡山大学と信州大学の連携によるクロスアポイントメント体制のもと、文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」(岡山大学:JPJS00420230010、信州大学:JPJS00420230007)の支援を受けて実施されました。さらに、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業(24H00485、24K21809、25H01674)および日本板硝子材料工学助成会の支援を受けています。
<詳しい研究内容について>
クリーンエネルギーで注目!可視光応答型光触媒の長年の謎を解明― 高活性と長寿命を両立する原理を発見 ―
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院先鋭研究領域
異分野基礎科学研究所
教授 山方 啓(やまかた あきら)
(電話番号)086-251-7832
信州大学アクア・リジェネレーション機構
特別栄誉教授 堂免 一成(どうめん かずなり)
(電話番号)026-269-5225
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