乾燥ストレスによるドライアイに新たな治療可能性 ― レキシノイド化合物NEt-3IBが炎症を抑え、眼表面の恒常性を回復 ―
2026年06月22日
◆発表のポイント
- 岡山大学で創出されたレキシノイド化合物「NEt-3IB」がドライアイモデルにて炎症を抑制
- 免疫細胞(マクロファージ)の遺伝子発現を恒常性維持型へと誘導
- 角膜バリア機能および結膜ゴブレット細胞の維持に寄与
- 既存治療(ステロイド)とは異なる新しい作用機序の可能性
米国ヒューストンのベイラー医科大学と日本の岡山大学による共同研究チームは、レキシノイド化合物NEt-3IBの投与が、乾燥した風環境への曝露によって誘発されるドライアイの発症を抑制することを明らかにしました。NEt-3IBはレチノイドX受容体α(RXRα)経路を活性化し、眼表面に存在するマクロファージにおける抗炎症作用および恒常性維持機能を促進します。この経路の活性化により、常在マクロファージの性質が維持されるとともに、炎症関連遺伝子の発現が抑制され、角膜バリア機能が保たれ、さらに結膜ゴブレット細胞の面積が増加しました。RXRαは、ビタミンA代謝産物やオリーブオイルおよび魚油に含まれる食事成分によって活性化される重要な調節経路であり、これらはドライアイ症状の改善と関連することが報告されています。
本研究の成果は、加齢や環境ストレス、栄養不足によって損なわれ得る体内の再生・抗炎症機構を活用した、ドライアイに対する新たな治療戦略を示すものです。
◆研究者からひとこと
| 本研究は、ベイラー医科大学のプフルフェグラー教授およびアラム博士が当方の化合物に関心を寄せ、共同研究をご提案いただいたことを契機に開始されました。これまで眼科領域の創薬研究に携わる機会はありませんでしたが、本研究を通じて点眼薬開発の難しさと重要性を実感しました。 従来のレキシノイド化合物は脂溶性が高く、水への溶解性に課題がありますが、NEt-3IBはその改善を志向して設計された化合物であり、本成果はその特性が寄与したものと考えています。 また、本研究で使用した化合物は、博士後期課程在籍時に高村祐太博士の協力により得られたものであり、この場を借りて深く感謝申し上げます。 | ![]() プフルフェグラー教授と加来田研究教授(ベイラー医科大学にて、2026年3月) |
■論文情報
論 文 名:Rexinoid NEt-3IB Promotes Resident Macrophage Gene Expression and Mitigates Desiccation-Induced Ocular Surface Disease
掲 載 誌:Investigative Ophthalmology & Visual Science
著 者:Jehan Alam; Yangluowa Qu; Jianming Shao; Ebru Yaman; Karen Zheng; Hiroki Kakuta; Stephen C. Pflugfelder
D O I:https://doi.org/10.1167/iovs.67.4.31
U R L:https://iovs.arvojournals.org/article.aspx?articleid=2811721
<詳しい研究内容について>
乾燥ストレスによるドライアイに新たな治療可能性 ― レキシノイド化合物NEt-3IBが炎症を抑え、眼表面の恒常性を回復 ―
<お問い合わせ>
岡山大学 学術研究院医歯薬学域
研究教授 加来田博貴
(電話番号)086-251-7963
(FAX)086-251-7926
