◆発表のポイント
- シネフンギンの生産が、熱ストレスおよび酸ストレスによって大きく向上する条件を確立、抗ウイルス剤の増産を支えるタンパク質品質管理遺伝子群(分子シャペロン)の機能分担を初めて明らかにしました。
- 複数のパラログ(類似遺伝子)を構成する分子シャペロンの発現制御を経時的に比較・定量できる新たなRT-qPCR法を開発しました。
- 重複して存在するパラログがロバストネスだけではなく、異なる役割を持って協調的に機能している役割分担を持っている可能性が示されました。
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の田村隆教授らの研究グループは、抗ウイルス・抗原虫作用を持つ核酸系抗生物質シネフンギンの生産が、熱ストレスおよび酸ストレスによって大きく向上する条件を確立するとともに、抗ウイルス剤の増産を支えるタンパク質品質管理遺伝子群(分子シャペロン)の機能分担を初めて明らかにしました。本研究では、複数のパラログ(類似遺伝子)を構成する分子シャペロンの発現制御を経時的に比較・定量できる新たなRT-qPCR法を開発しました。その解析法を駆使して、重複して存在するパラログがロバストネスだけではなく、異なる役割を持って協調的に機能している役割分担を持っている可能性が示されました。本成果は2026年4月27日に、国際科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。
◆研究者からひとこと
| 抗生物質シネフンギンは、抗真菌、抗ウイルス、抗原虫活性など多様な病原体の増殖を抑制しつつ、哺乳類には毒性を示さない発酵産物です。しかし、生産性が乏しく最適化した培地中でも4 ppm程度しか得られません。あるとき、適度な熱処理(44℃)や酸性ストレス(pH4)で2〜3倍に増産できることを見つけました。環境ストレスからタンパク質を保護・修復する分子シャペロンが微生物の発酵産物の増産にも関わるという未知のメカニズムを探求し始めたのが2016年で、気づけばこの課題も10年越しの研究になっていました。微生物に学び、メカニズムを追い続けることの大切さを感じます。 | ![]() 田村教授 |
■論文情報
論 文 名:Dual-calibration RT-qPCR reveals distinct dnaK1/2/3 and groEL1/2 expression dynamics under heat and acid stress in the sinefungin producer Streptomyces incarnatus
掲 載 誌:Scientific Reports
著 者:Xiao-Hui Zhao, Mao Kubo, Haruka Yamagata, Yuriko Nakashima, Tomohisa Hasunuma, Tadayoshi Kanao & Takashi Tamura
U R L:https://www.nature.com/articles/s41598-026-50057-5
YouTube:https://youtu.be/UYRa9Ky6Oiw
<詳しい研究内容について>
微生物のストレス応答を利用した抗ウイルス物質の増産機構を解明
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域
教授 田村 隆
(電話番号・FAX)086-251-8293・086-251-8388
