国立大学法人 岡山大学

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閉経後の頻尿や膣・外陰部症状、“膣・膀胱・腸の細菌の繋がり”が関与か~世界23研究・5,027人の解析から、GSM(閉経関連尿路性器症候群)に対する「膣-膀胱-腸 軸」という新たな考え方を提唱~

2026年08月21日

◆発表のポイント

  • 閉経後の女性に多い「閉経関連尿路性器症候群(GSM)」について、腟・尿路・腸の細菌叢(マイクロバイオーム)の変化を、世界の23研究(計5,027人)を統合して包括的に解析しました。
  • いずれの部位でも、善玉菌である乳酸桿菌(Lactobacillus)の減少と細菌の多様性の増加という共通の乱れ(ディスバイオーシス)が認められ、またエストロゲン補充で乳酸桿菌は回復しても症状の改善とは必ずしも一致しないことが分かりました。
  • 腟、膀胱、そして腸が相互に影響し合う「腟–膀胱–腸 軸(vaginal–bladder–gut axis)」という新たな概念を提示し、複数部位を同時に追跡する今後の研究の重要性を示しました。

 閉経関連尿路性器症候群(GSM)は、閉経後のエストロゲン低下によって生じる慢性の病態で、閉経後女性の約50~70%が経験するとされます。腟の乾燥や性交痛に加え、頻尿・尿意切迫感・再発性尿路感染症(rUTI)などの下部尿路症状を伴い、生活の質(QOL)を大きく損ないます。標準治療である腟局所へのエストロゲン投与には、乳がんの既往などで使用できない、あるいは効果が不十分な女性も少なくありません。
 岡山大学学術研究院医療開発領域(岡山大学病院・腎泌尿器科)の坪井一朗助教(特任)、定平卓也研究准教授、渡部昌実教授並びに光井洋介客員研究員(おかやま腎泌尿器科クリニック)らの研究グループは、こうした症状の背景にある細菌叢(マイクロバイオーム)の乱れに着目し、腟・尿路・腸という3つの部位の変化を統合的に検討するシステマティックレビューを実施しました。世界12か国で2016~2025年に報告された23研究(計5,027人。内訳:腟15・尿路7・腸1)を解析しました。その結果、いずれの部位でも善玉菌である乳酸菌(Lactobacillus)の減少と細菌の多様性の増加という共通の乱れが一貫して認められました。3つの部位に共通する変化から、腟・膀胱・腸が相互に影響し合う「腟–膀胱–腸 軸」という新たな視点を提示しました。本研究は、GSMを腟だけの問題ではなく複数部位にまたがる全身的な細菌叢の乱れとしてとらえ直すものです。これらの研究成果は、更年期医学の専門誌「Maturitas」に掲載されます(in press)。

◆研究者からひとこと

閉経に伴う尿や腟の不快な症状は、多くの女性が抱えながらも相談しづらく、見過ごされがちなテーマです。今回、世界中の研究を一つひとつ読み解くなかで、腟だけでなく膀胱や腸の細菌叢までもが連動して変化している可能性が見えてきたときは、非常にわくわくしました。ホルモン治療が使いにくい方にも届く、新しい選択肢につなげられるよう研究を続けていきます。
坪井助教(特任)
これまでわたくしの研究グループで継続してきた反復性膀胱炎に対する乳酸菌の基礎的並びに臨床的な知見や経験を、本研究による網羅的研究探索並びに統合により裏付けすることができました。本年度中には、閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM)に対してのわたしが独自に保有する乳酸菌株(gaiLaC株)の治療効果と安全性の検証を行いたいと思っています。
定平研究准教授
 本研究は、閉経に伴う腟や外陰部の乾燥・痛み、排尿トラブルなど多くの女性が抱える閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM)に対し、その背景にある腟・尿路の細菌叢(マイクロバイオーム)の変化を体系的に整理し、症状との関連を臨床的に捉え直した成果です。これまで主にエストロゲン欠乏の観点から語られてきたGSMを、細菌叢という新たな視点から捉えることで、従来の治療で十分な改善が得られない症例に対する新たな治療標的の可能性を示せたことは大きな意義があると考えています。今後は、細菌叢に着目した介入研究へと発展させながら、世界中でGSMに悩む女性の生活の質(QOL)向上に貢献できるよう取り組んでいきます。
渡部教授

■論文情報
論文名:Gut, Vaginal, and Urinary Microbiome Alterations in Women with Genitourinary Syndrome of Menopause: A Systematic Review
邦題名:閉経関連尿路性器症候群を有する女性における腸・腟・尿路マイクロバイオームの変化に関するシステマティックレビュー
掲載誌:Maturitas
著  者:Ichiro Tsuboi, Shota Inoue, Takashi Hirayama, Yosuke Mitsui, Masami Watanabe, Hidetada Hirakawa, Takuya Sadahira
D O I: 10.1016/j.maturitas.2026.109031.

閉経後の頻尿や膣・外陰部症状、“膣・膀胱・腸の細菌の繋がり”が関与か~世界23研究・5,027人の解析から、GSM(閉経関連尿路性器症候群)に対する「膣-膀胱-腸 軸」という新たな考え方を提唱~


<お問い合わせ>
岡山大学 学術研究院 医療開発領域
研究准教授 定平卓也
(電話番号)086-235-7287

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