国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISHCHINESE
MENU

「いつ来るか分からない連絡」を待つ日々に安心を ― 肺移植待機患者さんの不安に24時間寄り添う対話AIを開発 ―

2026年08月21日

◆発表のポイント

  • 肺移植を待機する患者さんが長期の待機期間中に抱える、不安や孤独感に寄り添うAIピアサポーターを開発しました。
  • 臓器移植医療センターの移植外科医が臨床課題の抽出とAIの性能評価に参画したほか、岡山大学病院の肺移植チームのメンバーが個々に試用し、問題点の指摘と改善のフィードバックをもとにシステム改修を重ねて完成させました。
  • 岡山大学病院の患者さんを対象に、試験利用を通じてその満足度やQOL(生活の質)評価体制の実行可能性を検証する研究を開始します。

 学術研究院医歯薬学域(医)医療情報化診療支援技術開発講座の長谷井嬢教授(特任)(整形外科)は、学術研究院医療開発領域(岡山大学病院臓器移植医療センター)の杉本誠一郎准教授、岡山大学病院呼吸器外科の近藤薫医員と共同で、肺移植を待機する患者さんの心理的サポートに特化したAIピアサポーターを開発しました。日本では脳死ドナー不足のため肺移植の待機期間が長く、平均900日(約2年半)を超えると報告されています。患者さんは、いつ移植の機会が訪れるか分からない不確実さの中で、病状の進行への不安や孤独感を抱えながら療養しており、待機患者さんの多くに睡眠障害も認められています。さらに、肺移植はそもそも実施数が限られているため、同じ経験を持つピアサポーターの担い手が少なく、こうした負担を既存の体制だけで支えることには限界がありました。本システムは、AIが肺移植経験者のピアサポーターとして対話に応じる点が特徴で、医学的な情報提供は行わず、傾聴と共感に特化しています。開発の過程では、肺移植チームのメンバーが個々に評価して問題点を指摘し、システム改修を繰り返して作成されました。患者さんは時間や場所を問わず、自身のスマートフォンなどから気兼ねなく不安や悩みを話すことができます。

◆研究者からひとこと

 肺移植を待つ患者さんは、いつ来るか分からない移植の連絡を待ちながら、「このまま待てるのだろうか」という不安や、夜にひとりで抱え込む孤独感と向き合っています。この臨床現場での課題を伺って開発することを決めました。私たちはこれまで、乳がん患者さんのためのAIピアサポーターなど、「患者さんの心に寄り添うメンタルケアAI」をテーマに開発を続けてきました。今回の開発では、日々患者さんと向き合う臓器移植医療センターの杉本誠一郎先生、呼吸器外科の近藤薫先生が、待機中の患者さんが実際に直面する課題を丁寧に抽出し、AIの応答の一つひとつを臨床の目で評価してくださいました。移植医療の現場の知見が組み込まれているからこそ、このAIは、肺移植を経験した先輩のように寄り添う「心の支え」の一つになれると信じています。長い待機期間を、ひとりで耐える時間ではなく、支えとともに過ごせる時間に変えられるよう、検証と改良を重ねていきます。
長谷井教授(特任)

■研究資金
 本研究は、JST スタートアップ・エコシステム共創プログラム(PSI2024_S1A10)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
「いつ来るか分からない連絡」を待つ日々に安心を ― 肺移植待機患者さんの不安に24時間寄り添う対話AIを開発 ―


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)医療情報化診療支援技術開発講座
教授(特任) 長谷井 嬢
(電話番号)086-235-7273

年度