高知大学
岡山大学
長崎大学
◆ポイント
- 長崎大学の実験水槽を用いて,火星の表面に見られるデルタ地形がどのような条件で形成されたのかを明らかにした。
- 海退でできたデルタ地形の分布と年代を調べた結果,38億年前から32億年前まで広大な海が存在していたことが明らかになった。
- 約21億年前以降にも小さな湖がまばらに存在し,太古火星における生命生息可能環境が,32億年前の海の消失以降も存続していた可能性が示された。
岡山大学環境生命自然科学研究科博士前期課程(研究当時)の鬼頭蓮氏(高知大学卒),高知大学理工学部の長谷川精准教授,岡山大学学術研究院先鋭研究領域(惑星物質研究所)のルジ・トリシット准教授,長崎大学の武藤鉄司名誉教授,イタリア・ダヌンツィオ大学の小松吾郎准教授(千葉工業大学惑星探査研究センター 客員主席研究員)らの研究グループは,火星に見られるデルタ地形を水槽実験で作ることに成功し(図1),その形成条件を明らかにしました。また,火星のデルタ地形の分布と形成年代を調べ,火星の海が消失したタイミングを解明しました。
現在の火星は極寒で乾燥した環境にあり,地表に液体の水は存在しません。一方でNASAの衛星探査などにより,火星の地表にはデルタや川などの流水地形が多数見つかったことから,約38億年前には火星表面に液体の水が存在し,北部には広大な海が存在したと考えられています。しかし,海が消失したタイミングや,海の存在そのものについては議論が続いており,太古火星の水環境の歴史については未だに統一見解が得られていませんでした。
そこで長谷川准教授らの研究グループは,火星の表面に見られる「デルタ(川が海に流れ込む場所にできる地形)」に着目。武藤名誉教授が開発した長崎大学の実験水槽を用いた一連の実験により,火星に海が存在した裏付けを探るとともに,海の存在時期の解明に挑みました。その結果,火星表面に見られるデルタ地形ができる形成条件を調べ,大規模な海退でできるデルタ地形や,小規模な湖で水位上昇時にできるデルタ地形を特定することに成功しました。さらに同研究グループは,NASAの火星衛星探査画像(CTX,MOLA)を用いて,それらデルタ地形の分布調査と,クレーター解析に基づく年代測定を行いました。
その結果,38億年前から32億年前まで火星北半球に確かに広大な海が存在し,約32億年前に海が消失していたことが実証されました。火星の海はこれまで考えられていたより長い期間存在していたのです。さらに,約21億年前以降にも小規模な湖環境がたびたび出現していたことも明らかになりました。このことは,太古火星に存在していた生命生息可能環境は,約32億年前の海の消失以降も持続していたことを示しています。
この成果は,Nature Publishing Groupが発行する科学誌「npj Space Exploration」に2026年10月1日付け(日本時間10月1日18時)で掲載されます。
■論文情報
論 文 名: Delta morphology reveals timings of early ocean regression and hydrologic shift on ancient Mars
掲 載 誌:npj Space Exploration
著 者:Ren Kito (鬼頭 蓮), Hitoshi Hasegawa (長谷川 精)*, Trishit Ruj (トリシット ルジ) *, Tetsuji Muto (武藤 鉄司), Gian Gabriele Ori (ジャン ガブリエレ オリ), Goro Komatsu (小松 吾郎) *責任著者
DOI: https://doi.org/10.1038/s44453-026-00056-7
<詳しい研究内容について>
火星の海が消失したタイミングを特定!~水槽実験で火星のデルタ地形を作ることで解明~
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