岡山大学
東北大学
島根大学
◆発表のポイント
- 統合失調症患者さんでは精神疾患がない方と比べて、肺がんの発見・診断が遅れており、さらに、一般的ながん治療を受ける方が少ないことが明らかとなりました。
- 具体的には、手術治療のほか、手術後の抗がん剤治療などそれぞれのステージに応じて推奨される標準的治療を受ける割合が低いことが示されました。
- 全ての人ががん治療の発展に取り残されることがないよう、がん治療を適切に受けられているかを経時的に把握し、治療を受けるための支援を多職種が連携して行っていく必要があります。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科精神神経病態学の山田裕士客員研究員と同学術研究院医療開発領域精神科神経科の藤原雅樹講師、国立がん研究センターの石井太祐研究員と藤森麻衣子室長、東北大学の中谷直樹教授、島根大学の稲垣正俊教授らの共同研究グループは、わが国の統合失調症患者さんが、精神疾患のない方と比べて、肺がんに対する手術や抗がん剤による標準的治療を受ける方がより少ないことを明らかにしました。また、統合失調症患者さんでは、肺がんがより進行したステージで診断されていることも示されました。肺がん治療がより発展した近年において、精神疾患を有する方における標準的治療の受療に関して調査した報告は世界でも初となります。
これらは、肺がんの発見の遅れに加えて、診断後に病期に応じて推奨される治療を受ける上でも障壁や困難が生じていることを示唆する結果です。診断が遅れると負担の大きい治療や、複雑な治療とならざるを得ないため、治療を受けることに困難が生じている可能性があります。そのため、治療負担の少ない早期段階でがんを発見する取り組みが重要です。同時に、統合失調症を有する方でもがんの診断後に適切ながん治療を受けられるよう、がん医療と精神医療を含む多職種・多領域の医療者が連携した医療提供体制の必要性が明らかになりました。
本研究結果は、10月8日、国際医学誌「CHEST」のオンライン版に掲載されます。
◆研究者からひとこと
| 今年1月に大腸がん治療の実態を報告し、このたび第二弾として、肺がん治療の実態を報告しました。特に肺がんでは、治療の受療状況に関する報告が古い年次の研究に限られていましたが、今回の研究では近年においても標準的治療を受ける方が少ないことが分かり、対策が急がれます。全ての方が適切ながん治療にたどり着けるよう、今後も研究と日々の診療に尽力したいと思います。 | ![]() 右:山田客員研究員 左:藤原講師 |
■論文情報
論文名:Impact of pre-existing schizophrenia spectrum disorder on the receipt of surgery and other treatments for non-small cell lung cancer: A multicenter nationwide cohort study in Japan
掲載誌:CHEST
著者:山田裕士、藤原雅樹、石井太祐、渡邊ともね、藤森麻衣子、中谷直樹、河村敏彦、大朏孝治、市原英基、島津太一、樋之津史郎、内富庸介、稲垣正俊
DOI:10.1016/j.chest.2026.05.016
URL:https://doi.org/10.1016/j.chest.2026.05.016
■研究資金
本研究は、科学研究費助成事業(若手研究)(課題番号 JP21K17249、がん治療格差のある障碍を抱える人に、標準治療を届ける介入の実装を目指した基盤研究、研究代表:藤原雅樹)、科学研究費助成事業(基盤研究C)(課題番号 JP23K09549、医療アクセスに障害を抱える人の、がん医療格差をモニタリングするための基盤研究、研究代表:稲垣正俊)および厚生労働科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業)(課題番号 JP23EA1031、精神障害のある方に対するがん検診及びがん診療のアクセシビリティの向上に資する研究、研究代表:稲垣正俊)の支援を受けて実施しました。
<詳しい研究内容について>
大規模データを用いて統合失調症患者さんの肺がん治療の受療率を明らかに―特に、抗がん剤治療を受ける人が少ないことを確認
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医療開発領域(岡山大学病院精神科神経科)講師 藤原雅樹
(電話番号)086-235-7242(FAX)086-235-7246
東北大学東北メディカル・メガバンク機構 広報戦略室 室長(教授) 長神風二(ながみ ふうじ)
(電話番号)022-717-7908
島根大学医学部総務課企画調査係(広報担当)
(電話番号)0853-20-2531(FAX)0853-20-2025
