国立大学法人 岡山大学

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病理標本の隠れた品質「厚さ」をAIで推定〜標本の品質を数値化し、病理診断と病理AIの品質向上へ〜

2026年10月16日

岡山大学
東京工科大学

◆発表のポイント

  • 病理標本の見え方は、染色の色だけでなく「切片の厚さ」にも大きく左右されます。厚い切片では細胞が重なり、色も濃く見えるなど、同じ組織でも画像が変化します。
  • 完成した切片の厚さを通常診療で簡便に測る方法はこれまでなく、「厚さ」を指標とする客観的な品質管理は困難でした。
  • 通常の顕微鏡画像からAIが厚さを高精度に推定することに成功。病理診断の品質向上と、標本のばらつきに強い病理AIの実用化への応用が期待されます。

 岡山大学学術研究院医歯薬学域病理学(免疫病理)の藤澤真義助教、大原利章研究准教授、松川昭博教授、同学術研究院環境生命自然科学学域(工)の竹内孔一准教授、同AI・数理データサイエンスセンターの嶋吉隆夫客員教授、同学術研究院教育研究マネジメント領域の岩﨑良章教授、東京工科大学応用生物学部の杉山友康教授、株式会社ハイテックシステムズ(樋口拓浩社長)の共同研究チームは、日常の病理診断で用いるHE染色の顕微鏡画像から、組織切片の「厚さ」をAIで高精度に推定する技術を開発しました。本成果は病理学分野の国際学術誌Laboratory Investigationに2026年9月17日付でオンライン公開されました。
 病理標本は数μmという薄い組織をガラス上に載せて観察しますが、切片が厚くなると細胞などの微細な構造物が物理的に重なり、染色も濃く見えるなど、同じ組織でも画像の見え方が変わります。研究チームは切片厚を高精度に実測して顕微鏡画像と照合し、実際の厚さが作製器具の設定値から外れることや、同じ切片の中でも場所によって厚さが異なることを明らかにしました。
 さらに、実測値と画像を機械学習させることで、観察に用いる通常の顕微鏡画像だけから厚さを推定するAIモデルを構築しました。最良モデルは独立テスト画像で平均0.28 μmの誤差で厚さを推定しました。これまで「見えない品質要因」だった厚さを数値化することで、通常の病理診断の安定化・精度向上を支えるとともに、施設ごとの標本差に影響されにくい病理AIの開発・実用化につながることが期待されます。


◆研究者からひとこと

顕微鏡からはとても多くの情報が得られます。ヒトの目にとっては苦手な情報もAIはしっかりと捉えてくれます。
藤澤助教

■論文情報
論文名:Direct measurement and AI-based inference reveal histological section thickness as a variable physical property accessible from routine H&E images
掲載誌:Laboratory Investigation
著者:Masayoshi Fujisawa, Toshiaki Ohara, Yuto Shimada, Koichi Takeuchi, Takao Shimayoshi, Tomoyasu Sugiyama, Takuhiro Higuchi, Yoshiaki Iwasaki, Akihiro Matsukawa
DOI:https://doi.org/10.1016/j.labinv.2026.106166
URL:https://www.laboratoryinvestigation.org/article/S0023-6837(26)00096-6/fulltext

■関連特許情報
 本技術に関連する発明は、2025年11月19日に日本国内で特許登録されました(特許第7777317号)。現在、海外での権利化も進めています。

■研究資金
 本論文の研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)(23K11895)および令和4年度岡山県ポストコロナ次世代産業研究開発事業費補助金の支援を受けました。関連する発展研究は、文部科学省「AI for Science萌芽的挑戦研究創出事業(SPReAD)」に採択されています。

<詳しい研究内容について>
病理標本の隠れた品質「厚さ」をAIで推定〜標本の品質を数値化し、病理診断と病理AIの品質向上へ〜


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学領域 病理学(免疫病理)
助教 藤澤 真義
(電話番号)086-235-7143

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