国立大学法人 岡山大学

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自己抗体バイオマーカーの測定系設計の鍵は「抗原の構造安定性」~抗原の安定性が自己抗体の認識様式に関わることを実証~

2026年10月23日

◆発表のポイント

  • がん関連抗原(がん抗原)の構造安定性と自己抗体の認識様式の相関関係を明らかにしました。
  • 抗原の構造安定性が低いほど自己抗体は配列エピトープを強く認識することを発見しました。
  • 独自開発の「S-カチオン化」技術は、配列エピトープを認識する自己抗体バイオマーカー測定に有利で、診断薬開発への応用が期待されます。

 岡山大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域の宮本愛助教と二見淳一郎教授らの研究グループは、肺がん患者の血液中の自己抗体が認識するがん抗原の特徴が、抗原の構造安定性と密接に関係することを明らかにしました。
 自己抗体とは、体内にある自分自身のタンパク質に結合する抗体です。健常人の血中には僅かしか存在しませんが、腫瘍に対する免疫応答が続くと、がん細胞内で異常に発現するタンパク質(がん抗原)にB細胞が反応し、さまざまな自己抗体が血中に現れます。これらは、がんに対する免疫応答の履歴や活動レベルを映すバイオマーカーとして、早期診断や免疫治療の効果予測への応用が期待されています。研究グループは、がんと相関する自己抗原を130種類以上同定し、自己抗体を網羅的かつ精密に測定する系の整備を進めています。その約8割は不安定で凝集しやすい性質を持っていました。そこで今回、不安定な自己抗原は、死んだがん細胞から漏れ出してB細胞に認識される時点で、多くが立体構造を失った変性状態や分解された状態にあると考え、自己抗体は主に「配列エピトープ」に結合すると予測しました。肺がん患者の血清で頻繁に観察される11種類の自己抗体をモデルに、立体構造を保ったnative抗原と、変性・可溶化したS-カチオン化抗原への結合の違いを調べました。その結果、抗原の構造安定性が低いほど「配列」を強く認識するという相関が見つかりました。自己抗体の測定では、抗原の構造安定性を考慮して設計することが、高精度ながん診断薬の開発に重要な指針となります。
 本研究成果は、2026年9月23日付で学術雑誌「Protein Science」に掲載されました。

◆研究者からひとこと

免疫応答の異常は、がんやさまざまな疾患と密接に相関しており、免疫応答の精密な測定が重要な課題です。自己抗体が持つ情報をより正確に捉える技術開発で、がんの早期診断や個別化医療の実現に貢献します。
左から宮本助教、二見教授

■論文情報
論 文 名:Conformational stability and domain‐specific structural features of tumor autoantigens regulate autoantibody epitope propensity
掲 載 誌:Protein Science
著  者:Ai Miyamoto, Rika Yamamoto, Ryui Sakaguchi, Rikako Kutsuma, Takeru Mori, Mirei Masui, Tomoko Honjo, Midori Futami, Mariko Morii, Hiromi Watanabe, Tadahiro Kuribayashi, Kadoaki Ohashi, Katsuyuki Kiura, Junichiro Futami
D O I:https://doi.org/10.1002/pro.70808

■研究資金
 本研究は、日本学術振興会(JSPS)の科学研究費助成事業(22H01881, 24K23389, 26K18768)、 JST-SPRING(JPMJSP2126)、日本血液学会研究助成、公益財団法人アステラス病態代謝研究会、公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会、特別電源所在県科学技術振興事業補助金、および科学技術振興機構(JST)の大学発新産業創出プログラム(START)(JPMJST1918)、J-PEAKS(JPJS00420230010)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
自己抗体バイオマーカーの測定系設計の鍵は「抗原の構造安定性」~抗原の安定性が自己抗体の認識様式に関わることを実証~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域
バイオ・創薬部門(工学部 化学・生命系)
教授 二見 淳一郎
(電話番号)086-251-8217

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