◆発表のポイント
- AED作動ログ8,115件を解析し、電源オンから初回解析終了までの時間の81%を、パッド装着完了までの過程が占めることを明らかにしました。
- 60秒以内の初回ショックを目指すうえで、「50秒以内のパッド装着完了」が探索的な目標として示されました。
- 全自動型AEDの普及と講習内容の見直しが、今後の救命率向上に必要です。
心停止から命を救うためには、できるだけ早くAED(自動体外式除細動器)を使用し、必要な場合には迅速に電気ショックを行うことが重要です。しかし、これまでの研究や心停止登録では、「AEDが使用されたか」、「電気ショックが行われたか」は記録されても、AEDの電源を入れた後、どの操作にどのくらいの時間がかかっているのかは十分に明らかになっていませんでした。
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)救命救急・災害医学講座の野島剛講師と中尾篤典教授らの研究グループは、実際のAED作動ログを用いて、電源オン、パッド装着完了、初回解析終了、電気ショックまでの時間を工程ごとに解析しました。
8,115件のAED作動イベントにおいて、電源オンからパッド装着完了までの時間は中央値42秒、パッド装着完了から初回解析終了までは9秒、電源オンから初回解析終了までは52秒でした。つまり、AEDの電源を入れてから初回解析が終了するまでの時間の81%が、パッド装着完了までの過程に費やされていたことになります。さらに、初回解析終了までに60秒を超えたケースでは、この割合は87%に上昇しました。なお、この42秒は「パッドを胸に貼る動作だけ」の時間ではありません。AEDの電源を入れてから、衣服への対応、胸部の露出、パッドの準備・取り出し、装着などを経て、AEDが電子的にパッド装着を検出するまでの一連の行動を含みます。
今回の研究から、AEDそのものの解析時間よりも、AEDを作動させてからパッド装着を完了するまでの一連のワークフローに、改善可能な時間が存在する可能性が示されました。この研究成果は10月20日、国際医学誌『Resuscitation』にオンライン掲載されました。
◆研究者からひとこと
| AEDは電源を入れ、その後の操作を迅速に進めることが重要です。今回、実際の作動記録から、AED作動後のどこに時間がかかっているのかを明らかにしました。「50秒以内」は今後の検証が必要な探索的目標ですが、「AEDを使える」から「AEDを迅速に使える」へ、教育や訓練を見直すきっかけになればと考えています。 | ![]() 野島講師 | ![]() 中尾教授 |
■論文情報
論 文 名:Identifying the Operational Bottleneck to Shock Delivery After Automated External Defibrillator Activation
掲 載 誌:Resuscitation
著 者:Tsuyoshi Nojima, Tetsuya Yumoto, Takafumi Obara, Kohei Tokioka, Takashi Hongo, Yoshinori Kosaki, Kohei Tsukahara, Atsunori Nakao, Hiromichi Naito
D O I:https://doi.org/10.1016/j.resuscitation.2026.111361
U R L:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0300957226024081
<詳しい研究内容について>
AED作動後の時間、8割はパッド装着完了まで― 8,115件の実使用ログから見えたAED操作のボトルネック ―
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)
救命救急・災害医学講座
講師 野島 剛
(電話番号)086-235-7427

