国立大学法人 岡山大学

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極めて活性の高い触媒の開発に成功 -酸化グラフェンにパラジウム微粒子を固定-

2014年05月29日

 岡山大学異分野融合先端研究コアの仁科勇太准教授らの研究グループは、非常に薄い炭素シート(酸化グラフェン)上にパラジウム微粒子を固定化する技術を確立し、極めて活性の高い触媒を作り出すことに成功しました。本研究成果は、2014年4月16日にイギリスの科学雑誌『Nanoscale』にオンラインでAdvance Articleとして掲載されました。
 本研究成果によって、医薬品や有機電子材料を効率的かつ、高純度に製造することが可能になりました。貴金属の使用量を低減することができるため、レアメタル(希少金属)問題の解決にも貢献できます。
 なお、本研究成果は特許出願済であり、現在、工業化などの社会実装に向けた取り組みを進めています。
<業績>
 岡山大学異分野融合先端研究コアの仁科勇太准教授らの研究グループは、①酸化グラフェンにパラジウム微粒子を固定化する合成法 ②合成した「金属-単層酸化グラフェン複合体」が従来の触媒よりも優れた活性を持つことを世界で初めて見出しました。① 従来、酸化グラフェンは凝集して重なりやすいため、単層の状態で取り扱うことがとても困難でした。本研究では、酸化グラフェンの凝集を抑制するため、エタノールと水を混合した溶媒の中でパラジウムを固定化。単層の酸化グラフェンに金属を固定化する今までにない革新的な合成法を開発しました。② 酸化グラフェンは、他の物質と化学反応する部分が多く、触媒の担体として使った場合金属をまんべんなく固定化することができます。これにより、パラジウムなどの高価な金属の使用量を約10分の1程度に減らすことに成功しました。
(パラジウム1原子あたりの触媒回転数TOF及びTONは237,000と高効率な触媒であることを確認。鈴木-宮浦反応)

<背景>
 本研究グループは、2012年以降、炭素原子と酸素原子を主として含む2次元シート材料「酸化グラフェン」の効率的合成法の確立と用途開拓を行っています。酸化グラフェンは、安価かつ大量に存在するグラファイト(黒鉛)を酸化することにより得られ、炭素1個の厚みからなる材料です。二次電池、透明導電膜、触媒、環境浄化材、潤滑剤などの幅広い用途を開拓する取り組みが盛んに行われています。

<補足>
 本研究は、独立行政法人科学技術振興機構(JST)さきがけ「分子技術と新機能創出」、科学研究費補助金(若手研究B)等の助成を受け実施しました。

発表論文はこちらからご確認いただけます

特許出願状況
仁科勇太“酸化グラフェンに金属を担持させる方法及びこの方法で作成した金属-酸化グラフェン複合体”PCT/JP2013/74937,2013年9月13日,岡山大学

発表論文:Shun-ichi Yamamoto, Hiroshi Kinoshita, Hideki Hashimoto, Yuta Nishina,* Facile preparation of Pd nanoparticles supported on single-layer graphene oxide and application for the Suzuki–Miyaura cross-coupling reaction, Nanoscale, 2014, Advanced Article; (doi: 10.1039/C4NR00715H)
報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
岡山大学異分野融合先端研究コア
准教授 仁科 勇太
(電話番号)086-251-8483
(FAX番号)086-251-8718
(URL) http://www.tt.vbl.okayama-u.ac.jp/

<添付資料>
パラジウム-単層酸化グラフェン複合体の合成法と特徴
 酸化グラフェンが凝集しないように,エタノールを用いてパラジウムを固定化。得られた複合体は、ppmオーダーのパラジウム添加量でも鈴木-宮浦反応の触媒として機能しました。この理由として,酸化グラフェンに固定化したパラジウムの全てが反応に寄与できることと,基質が吸着・脱離しやすいことが挙げられます。


従来の方法で合成された複合体と本方法で得られた複合体の比較
 従来はNaBH4のような強力な還元剤を用いてパラジウムを固定化していたため,酸化グラフェンの凝集が併発。そのため厚みも6nm以上あり,“グラフェン”とは言い難い材料でした。(左図)
 本研究成果である「パラジウム-酸化グラフェン複合体」は,酸化グラフェンの部分の厚みが1nm以下でパラジウム粒子が2nm程度の高低差としてはっきりと観測されます。(右図)

年度