国立大学法人 岡山大学

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放射能汚染土壌を除染する完全自動ロボットシステムを開発

2014年07月03日

 岡山大学自然科学研究科の見浪護教授の研究グループは、株式会社石垣と共同で、濾布交換作業を自動で行うロボットシステムを開発しました。汚染土壌を濾過する濾布の交換作業は、濃縮された放射能物質により被爆する恐れがあるため濾布交換作業を完全自動で行うロボットシステムの開発が必要不可欠でした。開発されたロボットは、3次元画像処理によって装置を認識し状況の変化に適応的に作業を進めることができ、完全自動濾布交換を可能にしました。
<業 績>
 2011年3月11日の 東北地方太平洋沖地震に伴う原発事故に由来する放射線環境汚染問題が深刻化しています。今後長い将来にわたって環境回復に係る支援作業が必要な状況となっており、除染土壌の洗浄再生・減容化技術の開発は福島の再生にとって重要な課題です。
 株式会社石垣は、汚染土壌の洗浄再生・減容化技術として汚染土壌を洗浄し汚染土壌の80%程度を洗浄再生土として回収すると同時に20%の高濃度濃縮汚染残土を生産するシステムにおいて、後者を固形・減容化するフィルタープレス技術を開発し、その実証実験に成功しています。しかし、高濃縮された汚染残土の固形・減容化処理工程における線量分布解析を行った結果、作業員被ばく低減化対策としてフィルタープレス装置のロボット自動化が不可欠でした。
 今回、岡山大学自然科学研究科の見浪護教授の研究グループは、株式会社石垣と共同で、除染時に大量に発生する放射能汚染土壌を固化・減容化することにより安定保管するための完全自動フィルタープレス装置用自動濾布交換ロボットシステムを開発しました。
 従来技術のロボットは工作物などの位置があらかじめ設定された位置と誤差が生じないことを前提としたもので、加工物の位置決め誤差が発生するとロボットは正確に動作できません。特に対象物の3次元位置・姿勢が変化する場合にはロボット作業は困難でした。本研究グループは、3次元対象物の認識方法としてMOS( move on sensing )システムを構築し、フィルタープレス装置の状況(濾布心棒の位置ずれなど)が変化しても適応的に作業を継続できるロボットシステムを開発しました。
 今後、本研究グループは、完全自動フィルタープレス/ロボットシステムの実用化に向けて、株式会社石垣と研究開発を進めていきます。

<見込まれる成果>
 完全自動フィルタープレス/ロボットシステムは、(1)水に解砕した土壌を溶かした水溶液を圧搾し放射能レベルが基準値以下の水と濃縮された放射能を含む脱水ケークに分ける通常の作業とともに、(2)定期的に行われる濾布交換作業(濾布には放射能物質が付着しているため作業者は被爆する可能性がある)を完全自動で行うことができます。このため、放射能の濃縮レベルを上げて高濃度に濃縮することも可能であり、
 ①作業者の被ばく低減化
 ②大量・長期間処理作業の全自動化による作業効率向上
 ③中間貯蔵処理施設の合理的運用ならびに将来的(20-30年後)な最終処分作業ならびに施設運用の合理化
に大きな効果が期待されます。

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
岡山大学大学院自然科学研究科、産業創成工学専攻
知能機械システム学講座 教授 見浪 護
(電話番号)086-251-8233
(FAX番号)086-251-8233

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