国立大学法人 岡山大学

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岡山大学とメニコンが共同開発したゲル 手術用止血材としても有効と世界で初めて確認

2014年07月17日

 本学大学院医歯薬学総合研究科(医)システム生理学教室の成瀬恵治教授の研究グループと株式会社メニコンが共同開発したゲルが手術用止血材として有効であることを、本学大学院医歯薬学総合研究科(医)形成再建外科学教室の木股敬裕教授と岡山済生会総合病院形成外科の小松星児医長を中心とする研究グループが世界で初めて確認しました。本研究成果は2014年7月21日(米国東部時間14:00)にオンラインジャーナル(PLOS ONE)で公開されます。
 岡山大学とメニコンが共同開発したゲルは自己集合性ペプチドからなるハイドロゲルです。非生物由来で基本的に感染のリスクがなく、無色透明である等の利点があります。止血材以外にも様々な用途に使用できる医療用新素材として期待されます。
<業 績>
 岡山大学システム生理学教室の成瀬恵治教授と株式会社メニコンは2010年に自己集合性ペプチドの特許を取得しました。同自己集合性ペプチドは水に溶かすとペプチド分子同士が自己集合し、ネットワーク構造を構築することで、中性領域で安定性の高いゲルを形成します。現在、この自己集合性ペプチドからなるゲルはスキャフォールド(細胞培養の足場)として使用されています(図1)。
 今回、本学形成再建外科学教室の木股敬裕教授と岡山済生会総合病院形成外科の小松星児医長を中心とする研究グループは、上記、自己集合性ペプチドをスキャフォールド用途のものと比べて高濃度で配合するなどした改良ゲルが、手術用止血材として有効であることを世界で初めて確認しました。

 自己集合性ペプチドゲルはペプチドを原料とした医療用新素材です。しかし、従来のものは酸性であり様々な問題を抱えていました。そこで、アミノ酸の配列を一から見直して中性で安定なゲルを形成可能なペプチド(SPG-178)を開発し、その改良ゲルが手術用止血材として有効であり、かつ、従来の自己集合性ペプチドゲルと比較しても止血効果が高いことを確認しました。

<見込まれる成果>
 現在、手術用止血材として様々な製品が実用化されていますが、生物由来であり未知の感染のリスクがある、透明でなく術野を妨げる等の問題を抱えています。
 本研究の自己集合性ペプチドゲルは従来の手術用止血材と比較し、生物由来ではない、無色透明である等の利点があります。従来の手術用止血材とは異なったメカニズムで止血させるため、血液が固まりにくく止血が困難な患者にも使用できると見込まれます。
 また、従来の自己集合性ペプチドゲルと比較しても、中性なので中和する必要がない、滅菌が容易である、止血効果が高い等の利点があります。
 医療用新素材の多くを外国産が占めていますが、本研究のゲルは純国産です。手術用止血材の市場規模は日本国内だけで約170億円とされており、経済的にも日本に大きな恩恵をもたらすことが期待されます。
 中性の自己集合性ペプチドゲルは、止血材以外にも、スキャフォールド、骨再建材、血管塞栓材等様々な用途に使用できると期待されています。

<補 足>
 手術用止血材とは、手術中に出血している場所に直接貼付・散布して止血する材料のことです。現在は、コラーゲンを原料とするシートや、血液を原料とする糊等が主に使用されています。

<ラットの肝臓での止血実験>


A.ラットの肝臓をメスで切開すると、傷口から出血します。
B.自己集合性ペプチドゲルを傷口に注入すると、数秒で出血の勢いが止まります。
C.10分後に自己集合性ペプチドゲルを除去しましたが、再出血は見られませんでした。

 本研究は科学研究費補助金(若手研究(B))および岡山医学振興会の助成を受け実施しました。

(原論文情報)
Komatsu S, Nagai Y, Naruse K, Kimata Y. The Neutral Self-Assembling Peptide Hydrogel SPG-178 as a Topical Hemostatic Agent. PLOS ONE, 2014
DOI: 10.1371/journal.pone.0102778

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<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)
形成再建外科学教室 教授 木股 敬裕
 TEL: 086-235-7214
 FAX: 086-235-7210

岡山済生会総合病院 形成外科 医長
 小松 星児
 TEL: 086-252-2211
 FAX: 086-255-2224

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