国立大学法人 岡山大学

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心筋細胞の力学的特性を測定する新技術を開発~心不全研究の新ツールに~

2014年08月06日

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科システム生理学分野の入部玄太郎講師と成瀬恵治教授の研究グループは、生体内の心臓で起こっている心筋の伸展と同程度の力を単一心筋細胞標本に負荷する技術を開発。これを用いて細胞力学実験を行うことに成功しました。
 高血圧や弁疾患などによる持続的な心筋への負荷が、心不全を引き起こすことが知られています。従来の技術では、十分な負荷をかけることができなかったため、生体内で実際に伸展されている状態の心筋細胞の機能研究は困難でした。今回の新技術はこの点を解決することに成功。今後の心臓力学研究や心不全研究の新たなツールとなることが期待されます
<業 績>
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科システム生理学分野の入部玄太郎講師と成瀬恵治教授の研究グループは、マウスの心臓から取り出した一個の心筋細胞の両端を微細なカーボンファイバーでピンセットのように挟んで保持・伸展することにより、生体内の心臓の拡張に相当する負荷をかける技術(図1右)を開発しました。本研究成果は、2014年6月26日にイギリスの科学雑誌『Progress in Biophysics and Molecular Biology』にオンライン掲載されました。

 心臓は一心拍ごとに拡張と収縮を常に繰り返していますが、拡張するときには心臓を構成している心筋細胞は伸ばされます。現在、高血圧や心臓弁疾患などは心筋に慢性的な伸展刺激が加わることにより心肥大・心不全へと移行することがわかっています。
 しかし、従来の技術(図1左)では、細胞の保持が弱く、生体内の心臓の拡張期に相当する力よりも、はるかに少ない力しか負荷することができませんでした。今回、研究グループはこの新しい技術を利用して従来方法では不可能だった伸展領域での心筋細胞の力学的特性を明らかにしました。

図1. 従来の方式(左)と今回新たに開発した方式(右)

<見込まれる成果>
 高血圧や心臓弁疾患などは心筋に慢性的な伸展刺激が加わることにより心肥大・心不全へと移行することがわかっていますが、これまでは単一細胞への有効な伸展負荷法がなかったため、伸展刺激が細胞機能にどのような機能変化を及ぼすかを直接検証することが困難でした。
今後、本技術が伸展刺激から心不全へ移行するメカニズムを解明するための有用なツールとなることが期待されます。

 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金(23300167, 22136008, 26282121)の助成を受け実施しました。

発表論文はこちらからご確認いただけます

発表論文:Iribe G, Kaneko T, Yamaguchi Y, Naruse K. Load dependency in force–length relations in isolated single cardiomyocytes. Progress in Biophysics and Molecular Biology. 2014. (DOI: 10.1016/j.pbiomolbio.2014.06.005)

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科
システム生理学分野 講師 入部 玄太郎
(電話番号)086-235-7115
(FAX番号)086-235-7430
(URL)//www.okayama-u.ac.jp/user/med/phy2/index.htm

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