国立大学法人 岡山大学

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認知症患者の「生活の質」を簡便に、客観的に評価することが可能に

2014年10月08日

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科精神神経病態学教室の寺田整司准教授らの研究グループが、認知症患者の「生活の質」を簡便に評価するスケール1)を開発しました。認知症患者の笑顔や喜びといった陽性感情に、より焦点を当てた簡便で客観的な評価スケールは、世界でも初めてのものであり画期的です。
 本研究成果は、2014年8月27日に国際老年精神医学会の学会誌『International Psychogeriatrics』に掲載されました。
 認知症ケアの現場では、患者の「生活の質」を高めることを目指して、介護を行うことが重要です。ケアの第一線でも簡単に使用することが出来るスケールが作成されたことで、より良い認知症ケアの開発が可能になるものと大きく期待されています。
<業 績>
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科精神神経病態学教室の寺田整司准教授、内富庸介教授らの研究グループは、認知症患者の「生活の質」を評価するための31項目にもおよぶ詳細な客観的スケールを2002年に開発。それから10年余りをかけて、より簡便で、患者の笑顔や喜びといった、陽性の感情に焦点を当てた9項目の客観的評価スケールを開発しました。
 「生活の質」を考える場合には、本人の主観的な評価が非常に重要です。しかし、進行した認知症の患者では、自己評価が困難な場合が少なくありません。そのため、認知症患者の「生活の質」を客観的に評価するスケールが、数多く開発されてきました。ただ、それらの多くは、主に知的機能や生活能力を評価するスケールであり、患者の気持ちを評価しようとするものは稀でした。また、評価項目数が非常に多く、日常の介護の現場で使用することは難しいという欠点がありました。
 そこで、研究グループでは、笑顔や喜びといった陽性の感情と、怒りや叫びといった陰性の感情に焦点を当てて、より簡便で客観的な評価スケールを、10年余り年月をかけて、新たに開発しました。このような、陽性の感情に大きく焦点を当てた評価スケールは世界でも初めてであり、画期的なことです。

<見込まれる成果>
 認知症の根本的な治療薬は、今なお開発されていません。そのため、お薬を飲めば治るといった簡単な医療の構図は成り立ちません。病気を抱えた認知症の患者が、より良い生活を送られるようサポートしていくことが、認知症介護の目的ですが、客観的な評価法が無いため、どのような介護を行うことが患者の「生活の質」を高めていくのに役立つかを確認することは出来ないのが現状でした。
 今回開発されたスケールを用いることで、認知症が進んだ方でも、「生活の質」を客観的に評価することが可能となります。しかも評価項目が少ないため、多忙な介護の現場でも比較的容易に使用することができます。いろいろな認知症介護のやり方を客観的に比較して検討することが可能となるため、より良い介護方法が開発されることが期待されます。

 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金「認知症に罹患した高齢者の人権に関する実践的研究(21591517)」の助成を受け実施しました。

発表論文はこちらからご確認いただけます
発表論文:Terada S, Oshima E, Ikeda C et al. Development and evaluation of a short version of the quality of life questionnaire for dementia. International Psychogeriatrics, 2014; (doi: 10.1017/S1041610214001811)
用語解説)1)スケール:一般的には、測定器具あるいは物差しを意味する。ここでは、(「生活の質」を)測定するための評価票を意味している。
報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
精神神経病態学教室 准教授 寺田 整司
(電話番号)086−235−7242
(FAX番号)086−235−7246
(URL)//www.okayama-u.ac.jp/user/med/psychiatry/index.html

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