国立大学法人 岡山大学

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かみ合わせと12歳臼歯の生え方に関連

2015年02月27日

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)予防歯科学分野の森田学教授、大森智栄(大学院生)の研究グループは、同大保健管理センターの岩﨑良章准教授と共同で、「12歳臼歯(最も奥に生える歯、第二大臼歯)の生え方に異常がある大学生は、かみ合わせの異常が多い」ことを、2千人を超える横断研究1)で初めて突き止めました。本研究成果は、日本の専門雑誌『口腔衛生学会雑誌』2015年1月号に掲載されました。
 今後、幼少期にかみ合わせを正常にすることで、適正な時期・場所に歯が生えるようにできることが期待されます。
<研究成果>
 本研究の対象者は、18、19歳の大学生2205人。通常この年齢では、上下左右に計4本の12歳臼歯が生えています。しかし、今回の研究では、12歳臼歯が1本以上生えていない者は18人(0.9%)、生える方向・位置が正常でない者は240人(12.4%)いました。
 ロジスティック回帰分析3)の結果、12歳臼歯の生え方が異常(まったく生えていない・正常に生えていない)となるリスクとして「かみ合わせの異常」があげられ、男性で3.9倍、女性で3.2倍となりました(図)。

図. かみ合わせの悪い者は正常なかみ合わせの者と比べて12歳臼歯の生え方が異常(まったく生えていない・正常に生えていない)になるリスクが有意に高い


12歳臼歯の生え方に異常を起こす原因には、生える方向への障害や生えるためのメカニズムの欠損などがあります。かみ合わせの異常があることで、12歳臼歯の前後に十分なスペースがなく、生える方向への障害が生じたために、12歳臼歯の生え方に異常が生じたのではないかと考えられます。

<見込まれる成果>
 本来12歳で生えると言われている12歳臼歯が、18、19歳の大学生でも正常に生えていないケースが10%程度いることを同グループは以前に報告しています。今回、その理由の一つにかみ合わせの異常が関係していることが新たにわかりました。本研究は横断研究であるため、因果関係があるとは言えません。しかし、もしかみ合わせを正常にすると、適正な時期・場所に歯が生えるようにできるかもしれないと考えられます。その結果、正常な歯並びで、すべての歯が十分に機能できて、おいしく食事ができることにつながるでしょう。
 また、第三大臼歯(親知らず)を例にとると、生え方に異常があると、その歯だけでなく、隣在する歯(12歳臼歯)にもむし歯や歯周病を引き起こしやすいことがわかっています。今回の研究でも12歳臼歯の生え方が悪いと、6歳臼歯の歯周病に影響を与える可能性が見出されました。12歳臼歯が正常に生えるようにすることは、6歳臼歯の歯の疾病予防に役立つことにもつながります。

<補 足>
 平成25年度学校保健統計によると、中学校・高等学校においては「裸眼視力1.0未満の者」の健康障害に次いで「むし歯(う歯)」が2番目に大きな問題となっています。17歳では60%の人にむし歯になった経験があると報告されています。以前に比べると、むし歯は減少傾向にはありますが、未だに多くの国民に被害を与えています。
 平成23年度歯科疾患実態調査委によると、20-24歳では、歯ぐきになんらかの問題を抱えている人が70%以上います。日本人が歯を失う二大原因は、むし歯と歯周病です。むし歯や歯周病の予防のためにはさらなる対策が必要とされています。

<語句説明>
1) 横断研究:横断研究とは、ある一時点においての観察を行うもの。
2) 12歳臼歯:第二大臼歯とよばれる歯で、前から数えて7番目の歯である。
  通常の萌出時期は12歳ころである。
3) ロジスティック回帰分析:ある事象の発生確率を予測する手法で、
  複数の変数のオッズ比を算出できる。交絡影響を取り除いてリスク
  因子を評価する際に用いられる。

発表論文はこちらからご確認いただけます
日本口腔衛生学会HP

発表論文:大学生における第二大臼歯の萌出状態と口腔内の因子との関係
      日本口腔衛生学会雑誌.2015年65巻1号:17-25.

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)
予防歯科学分野 教授 森田 学
(電話番号)086-235-6712
(FAX番号)086-235-6714
(URL)http://www.cc.okayama-u.ac.jp/~preventive_dentistry/top.html

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