国立大学法人 岡山大学

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産学共同で石油樹脂製造用の革新的な触媒技術を開発 第8回村川技術奨励賞を受賞

2013年05月29日

産学共同で石油樹脂製造用の革新的な触媒技術を開発 第8回村川技術奨励賞を受賞

 国立大学法人岡山大学(学長:森田潔)は、RIMTEC 株式会社(代表取締役社長:桜井賢典)と共同で、新用途向けの石油樹脂を提供する新たな触媒技術の開発に成功しました。大学院自然科学研究科の押木俊之講師を中心とする産学連携体が、本学産学官融合センター(芳賀地区)にて、”ひとつ屋根の下”で触媒に関する共同研究開発を進め、このたび新技術の実用化の目処がつきました。
 本新技術は、地域における科学技術、産業の活性化・発展に資することが認められ、(公社)山陽技術振興会から第8 回村川技術奨励賞を5 月22 日に共同受賞しました(題目:新用途向けグレードの石油樹脂を提供する新たな触媒技術の開発)。
<実用化研究の経緯と成果>
 岡山大学とRIMTEC 株式会社水島事業所の産学連携体は、ジシクロペンタジエンを原料とする石油樹脂(C5 樹脂)の新用途展開へ向けた産学共同研究を2009 年から始めた。
 新用途への展開の鍵は、従来石油樹脂では困難だった、樹脂物性をさらに向上させる多様な添加剤の付与などを可能とする新たな技術開発である。
 新たな技術の中核は触媒技術である。工業化を指向した触媒基礎研究に実績のある押木俊之講師を中心とする産学連携体が、岡山リサーチパーク(北区芳賀)内の岡山大学産学官融合センター(センター長:藤原貴典)を拠点に、設備と人員を結集した集中研究を実施した。
 (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)(産業技術研究助成事業)、(公財)ちゅうごく産業創造センター(新産業創出研究会)の支援を受け、樹脂に添加剤を付与できる新たな触媒技術の開発に初めて成功。新用途向けグレードの石油樹脂の実用化に目処がついた。
 本成果により、第8 回村川技術奨励賞を(公社)山陽技術振興会から受賞。授賞式は5 月22日に倉敷国際ホテルにて開催された。

<今後の展望>
 石油樹脂の軽くて丈夫な特性と省エネ性を活かし、既存のエポキシ樹脂の代替を進める。
 新技術で可能とした添加剤により、樹脂に難燃性や導電性などの従来にない機能を付与できる。これにより、電子・電気分野などでの活用が新たに想定される。
引き続き、本産学連携体で岡山大学を拠点とする研究開発を進め、さらに革新的C5 樹脂の創出も図り、活気ある持続可能な社会の構築に貢献する。

<用語解説>
石油樹脂
 粗製ガソリン(ナフサ)中に含まれる余剰品の、炭素数5 のC5 留分(ジシクロペンタジエン等)
 あるいは炭素数9 のC9 留分(インデン等)を重合して得られる樹脂である。比重が軽く、耐衝
 撃性に優れた原理的特性をもつ。現在、エネルギー分野、自動車分野、医療分野などで広
 く活用されている。C5 留分から製造される樹脂をC5 樹脂と呼ぶ。
ジシクロペンタジエン
 C5 樹脂用の工業グレード品は無色透明の液体。その粘度は水より低く、サラサラである。
添加剤
 市販の樹脂にはなんらかの添加剤が加えられており、樹脂成分単独で流通することはほと
 んどない。添加剤の目的は、樹脂の成形加工性を改善するため、目的とする物性(強度な
 ど)の獲得のためなどさまざまであり、樹脂成分単独では得ることができない性能を添加剤
 により初めて実現できる。多様な添加剤の活用は樹脂製品の多様化に大きく貢献する。
触媒
 化学反応の前後でそれ自身は変化しないが、その反応速度を速める効果のある物質。石
 油樹脂製造においては、原料ジシクロペンタジエンを樹脂化する(硬化させる)物質を指す。
岡山リサーチパーク
 平成5 年度に造成が完了した岡山県の産学官が集結する研究開発拠点。岡山市北区芳
 賀。多数の民間企業とともに、岡山県工業技術センター、テクノサポート岡山、岡山リサー
 チパークインキュベーションセンターなどが立地。
岡山大学産学官融合センター
 岡山リサーチパーク内に平成6 年に立地した地域産業界との産学連携活動拠点。センター
 内の11 の研究室・実験室には、大学関係の研究者民間企業等との共同研究を目的に入
 居している。岡山大学研究推進産学官連携機構が所管。
エポキシ樹脂
 汎用の高強度樹脂。比重が大きく(重く)、粘度が高く、耐薬品性にやや劣る。石油樹脂は原
 理的にこれらの欠点がないので、代替する価値がある。エポキシ樹脂の身近な用途は2 液
 混合型のエポキシ接着剤や、繊維強化プラスチックの樹脂成分。
革新的C5 樹脂
 岡山大学、RIMTEC 株式会社、ゼオンリム株式会社が現在共同開発中の、これまでのC5
 樹脂技術の延長線上にない、並外れた高強度かつ超耐熱性を有するC5 樹脂を「革新的
 C5 樹脂」と呼ぶ。
村川技術奨励賞
 (財)村川工業ライブラリー(MKR)は、平成16年から「MKR技術奨励賞」を設立、これは
 理事長の村川二郎氏(山陽技術振興会前会長)の科学技術の振興、活性化に対する優れ
 た見識と熱意によるものだった。山陽技術振興会は平成18 年末に亡くなられた村川氏の志
 を継ぎ、氏の技術振興への業績を顕彰し、事業を継続。岡山県を中心とする隣接地域にお
 ける科学技術、産業の活性化・発展に資することを目的としている。

<研究者の情報>
押木俊之 (おしき としゆき)
岡山大学大学院自然科学研究科化学生命工学専攻 講師
(1)研究者の略歴
1967 年 新潟県小千谷市生まれ
1991 年 千葉大学大学院理学研究科修了 理学修士
1998 年 大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了 博士(理学)
1998 年 岡山大学大学院自然科学研究科助手として着任、2002 年より講師。
(2)専門分野
触媒化学、無機化学
(3)受賞歴
2006 年3 月 日本化学会 第11 回技術進歩賞
2012 年7 月 岡山工学振興会 科学技術賞
2013 年5 月 山陽技術振興会 第8 回村川技術奨励賞

<関係機関の情報>
RIMTEC 株式会社
 2003 年8 月に日本ゼオン株式会社と帝人化成株式会社で設立。現在は日本ゼオン社の
 100%子会社、資本金4 億9000 万円。倉敷市水島C 地区に水島事業所を立地。
(公社)山陽技術振興会
 倉敷絹織(株)社長(現(株)クラレ)の故大原總一郎氏の提唱に応え約50の各種法人が協
 力して、昭和21年に倉敷市で創立。時代に応じたさまざまな技術振興事業を実施。
(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構
 新エネルギーおよび省エネルギー技術などの開発をおこなう経済産業省所管の独立行政
 法人。略称はNEDO(ネド)。本部は神奈川県川崎市。
(公財)ちゅうごく産業創造センター
 中国地域における産業の活性化、地域の振興及び技術に関する、調査研究・助成、プロジ
 ェクトの発掘及びその実現化支援等を行うことにより、中国地域の産業・地域の発展及び
 技術水準の向上ひいては新産業の創造並びに豊かで持続可能な地域社会の実現を図り、
 もって我が国の発展に寄与することを目的する。昭和62 年に財団法人中国産業活性化セ
 ンターとして設立。

報道発表資料はこちらをご覧ください

<お問い合わせ>
岡山大学大学院自然科学研究科 講師
押木俊之
(電話番号)086-286-8035
(FAX番号)086-286-8035

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