体外で生体組織成長を促進するゲル材料を開発
2015年06月22日
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)生体材料学分野の松本卓也教授、武田宏明助教らの研究グループは、体外で生体組織成長を促進するゲル材料の開発に成功。マウスから取り出した唾液腺組織を培養したところ、成長が大きく促進されることを確認しました。本研究成果は6月22日(英国時間午前10時)、英国の科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。
再生医療は新しい医療の一つとして注目されていますが、組織成長に掛かる時間に大きな問題がありました。今回、開発に成功した材料は細胞接着性ペプチドを化学的に固定化した糖材料です。本研究成果は、体外での移植可能な生体組織作製の実現を加速する基盤材料として非常に有望で、生体外における移植可能な生体組織作製時間の短縮が期待されます。
<業 績>再生医療は新しい医療の一つとして注目されていますが、組織成長に掛かる時間に大きな問題がありました。今回、開発に成功した材料は細胞接着性ペプチドを化学的に固定化した糖材料です。本研究成果は、体外での移植可能な生体組織作製の実現を加速する基盤材料として非常に有望で、生体外における移植可能な生体組織作製時間の短縮が期待されます。
岡山大学の松本卓也教授らの研究グループは、唾液腺組織や肺、腎臓などの組織形成時に重要な働きを示すフィブロネクチンというタンパク質に着目。機能ドメインであるペプチド(RGD)を固定化した糖系ハイドロゲルシートの開発に成功しました。本シート上でマウスから取り出した唾液腺組織を培養したところ、普通の状態よりも約6倍成長が促進することを確認。RGD導入量に依存していることが分かりました。今回、本ペプチドを使ったゲル材料が細胞ではなく、実際の生体組織成長を著しく促進することを世界で初めて示しました。
<背 景>
再生医療は新しい医療の1つとして注目されています。しかし、移植細胞などを用いて体内で生体組織を再生し、失われた機能を回復するためには、細胞移植後、長期にわたる組織再生時間が必要です。このため、実際の再生医療はごく限られた組織でのみ実現しているのが現況です。この解決策として、近年、三次元の移植可能な生体組織を体外で作る試みが盛んになっています。これまでの研究で細胞分化を誘導し体外で生体組織構築を達成した例がいくつか報告されていますが、依然として、組織成長にかかる時間は大きな問題がありました。
本研究グループは、実際に生体組織が成長する環境を、生体親和性が高い生体材料(バイオマテリアル)を用いて体外で再現することに着手しました。
<見込まれる成果>
RGDペプチドは細胞接着性を高め、細胞の生存性を高めることが知られており、細胞培養器材や移植材料として研究利用されています。本材料は、体外での移植可能な生体組織作製の実現を加速する基盤材料になると大いに期待されます。
<論文情報>
タイトル:Peptide-modified Substrate for Modulating Gland Tissue Growth and Morphology In Vitro. 著 者:Hiroaki Taketa, Gulsan Ara Sathi, Mahmoud Farahat, Kazi Anisur Rahman, Takayoshi Sakai, Yoshiaki Hirano, Takuo Kuboki, Yasuhiro Torii, Takuya Matsumoto雑 誌 名:Scientific Reports, 2015
報道発表資料はこちらをご覧ください
<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)
教授 松本 卓也
(電話番号)086-235-6665
(FAX番号)086-235-6665