国立大学法人 岡山大学

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植物がカルシウムイオンを利用して乾燥ストレスに応答する分子機構を解明

2015年07月24日

 岡山大学大学院環境生命科学研究科(農)の宗正晋太郎助教とカリフォルニア大学サンディエゴ校のジュリアン・シュレーダー教授らの共同研究グループは、植物ホルモンであるアブシジン酸がカルシウム情報伝達を介して気孔閉口を誘導する分子機構を明らかにしました。
 本研究成果は7月20日、オンライン国際科学誌「eLife」に発表されました。
<業 績> 
 本学の宗正助教とカリフォルニア大学サンディエゴ校のジュリアン・シュレーダー教授らの研究グループは、植物ホルモンであるアブシジン酸が、2種のタンパク質リン酸化酵素CPKとSnRK2、そしてカルシウムイオンを巧みに利用して気孔閉口を誘導する分子機構を明らかにしました。

<背 景>
 植物の葉の表皮には一対の孔辺細胞から形成された気孔と呼ばれる小孔が存在します。植物は気孔を開くことで、光合成に必要な二酸化炭素を吸収し、また蒸散により水を放出することで、土壌の栄養を根から吸収するために必要な駆動力を得ています。
 しかし、利用できる水が限られた乾燥条件下では、過度の蒸散による枯死を防ぐため気孔を閉口する必要があります。この気孔閉口応答は、植物ホルモンであるアブシジン酸の働きによるものです。気孔閉口を制御するアブシジン酸情報伝達には、カルシウムイオンが重要な情報伝達因子として機能することが20年以上も前から明らかとなっていましたが、その詳細な分子機構は不明なままでした。

<見込まれる成果> 
 本研究は、植物が乾燥ストレスを認識後、カルシウムイオンを用いてその情報をいかにして気孔閉口という応答に変換するかを明らかにしました。水資源の豊かな日本にいては気付きにくいですが、世界的に見れば干ばつが農作物の収量に与える影響は甚大です。本研究成果は、乾燥耐性作物の作出に必要な新たな分子基盤情報を提供しました。


論文名: Calcium Specificity Signaling Mechanisms in Abscisic Acid Signal Transduction in Arabidopsis Guard Cells
発表雑誌:eLife
著者: Benjamin Brandt, Shintaro Munemasa, Cun Wang, Desiree Nguyen, Taiming Yong, Paul G Yang, Elly Poretsky, Thomas F Belknap, Rainer Waadt, Fernando Alemán, Julian I Schroeder
DOI: http://dx.doi.org/10.7554/eLife.03599.001

発表論文はこちらからご確認いただけます


<お問い合わせ>
岡山大学大学院環境生命科学研究科(農学系)
生物情報化学研究室 助教 宗正 晋太郎
(電話番号)086-251-8310
(FAX番号)086-251-8388

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