国立大学法人 岡山大学

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汚染水から放射性ストロンチウムを吸着・除去し固定化する新技術を開発

2015年07月24日

 岡山大学自然生命科学研究支援センターの小野俊朗教授、花房直志准教授らの研究グループは、骨と同一成分のヒドロキシアパタイト(HAP)を用いて汚染水から効果的に放射性ストロンチウムを吸着・除去する新規技術を開発しました。さらに、放射性ストロンチウムはHAPに吸着・固定化した後、少量の個体廃棄物として保管廃棄できることを明らかにしました。本研究成果は6月20日、ハンガリー国の国際雑誌「Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry」電子版に公開されました。
 本研究成果により、分離・測定が困難なために遅れていた放射性ストロンチウムの調査、研究が進展すると期待されます。
<業 績>
 小野教授らの研究グループは、HAPを吸着剤とした汚染水からの放射性ストロンチウムの除去法を開発しました。また、HAPによる放射性ストロンチウムの吸着は、汚染水(天然水)中に多量に存在する、ストロンチウムと同じ化学的性質のカルシウムやマグネシウムは妨害しないことを明らかにしました。さらに、HAPカラムに吸着された放射性ストロンチウムは溶離液で溶離が可能であり、HAPカラムは再利用することができることから、放射性ストロンチウムをHAPに安全に固定化して安定的に保管廃棄する技術を確立しました。HAPはリン酸カルシウムの一種で、骨の主成分と同一です。このため、生体親和性があり、環境に対して安全であることが大きな特徴です。


<背 景>
 福島第一原発事故により、環境中に放射性セシウムや放射性ストロンチウムが大量に放出されました。放射性セシウムはガンマ線放出核種であり、測定や解析が容易であることから、汚染状況や除染の評価が広く行われてきました。一方、放射性ストロンチウムはベータ線核種であることから、測定評価のためには複雑な分離、分析過程が必要となります。このため、環境中に放出された放射性ストロンチウムに関する除染法を含む調査、研究開発は進んでいません。

<見込まれる成果>
 HAPカラムによる本法により実用的な規模での汚染水中の放射性ストロンチウムの吸着・除去が可能となります。さらに、除染後の土壌や植物体あるいは焼却炉の飛灰などからの抽出液にも適用可能となります。

<補 足>
 本研究は大学機能強化戦略経費「東日本大震災被災農地の修復」(岡山大学資源植物科学研究所山本洋子教授)により実施しました。

<論文情報>
著者 Yuichi Nishiyama, Tadashi Hanafusa, Jun Yamashita, Yoko Yamamoto and Toshiro Ono題名 Adsorption and removal of strontium in aqueous solution by synthetic hydroxyapatite誌名 Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry,
DOI 10.1007/s10967-015-4228-9, 2015

<お問い合わせ>
岡山大学自然生命科学研究支援センター
教授 小野 俊朗
(電話番号)086-235-7496

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