国立大学法人 岡山大学

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B型肝炎ウイルス感染に対抗する新たな宿主遺伝子の機能を解明

2015年10月19日

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)腫瘍ウイルス学分野の團迫浩方助教、加藤宣之教授らの研究グループは、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染を認識する宿主因子cyclic GMP-AMP synthetase (cGAS)を新たに同定。cGASがHBV感染粒子の形成を阻害する新たな分子機構を明らかにしました。本研究成果は10月16日、欧州の生化学関連の総合誌「FEBS Journal」に掲載されました。
 本研究成果により同定されたcGASは細胞内の自然免疫応答を発動させるDNAセンサーとして機能することから、本因子を活性化させることができれば、B型慢性肝炎患者のHBV量を大幅に減少させることが期待されます。

<業 績>
 岡山大学の團迫助教、加藤教授らの研究グループは、HBVゲノムである二本鎖DNAを「非自己」として認識する宿主因子cGASを新たに同定。cGASがHBV感染を認識するDNAセンサーとして機能していることを明らかにしました。さらに解析を進めた結果、HBV感染を認識したcGASが、自然免疫応答の1つであるSTINGシグナル伝達系を発動させ、最終的に細胞内で新たに作られるHBV感染粒子の形成を阻害するという新たな分子機構を明らかにしました(図1参照)。

<背 景>
 今回同定した宿主因子cGASは、ワクシニアウイルスや単純ヘルペスウイルスなどのDNAウイルスの認識に関与していることが最近報告されています。HBV感染実験に汎用されていた培養肝細胞株ではcGAS の発現が非常に低かったことから、これまでcGASの機能解析が遅れていました。
 本研究グループは種々の培養肝細胞株の中からcGASが高発現している細胞株を見つけ研究を開始。DNAウイルスに属するHBVの感染認識機構の解明に取り組みました。

<見込まれる成果>
 本研究成果からB型慢性肝炎患者の肝臓内におけるcGASの発現量によりHBV量が調節されている可能性があることが分かりました。cGASの発現を人為的に高めることができれば、体内の自然免疫応答が高まりHBV量を大幅に減少させることができると期待されます。
図1. cGAS-STINGシグナル伝達系によるHBV感染粒子形成の阻害機構
 HBVは肝細胞に感染後、ウイルスゲノムであるHBV DNAを複製する。cGASは複製により増幅したHBV DNAを認識し、自然免疫応答の1つであるSTINGシグナル伝達系を発動させ、最終的に細胞内で新たに作られるHBV感染粒子の形成を阻害する。

<発表論文>
Dansako H, Ueda Y, Okumura N, Satoh S, Sugiyama M, Mizokami M, Ikeda M, Kato N. The cyclic GMP-AMP synthetase-STING signaling pathway is required for both the innate immune response against HBV and the suppression of HBV assembly. FEBS J, 2015

発表論文はこちらからご確認いただけます。

 本研究は、厚生労働科学研究費補助金(現:日本医療研究開発機構(AMED))肝炎等克服実用化研究事業の助成を受け実施しました。


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)
腫瘍ウイルス学分野
助教 團迫 浩方
教授 加藤 宣之
(電話番号)086-235-7390
(FAX番号)086-235-7392

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