高血圧治療薬2種が心臓収縮を抑制しないことを確認
2013年06月25日
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(システム生理学分野)の成瀬恵治教授と入部玄太郎講師の研究グループは、高血圧治療に広く使われているカルシウム拮抗薬のアゼルニジピンとアムロジピンが心臓収縮をほとんど抑制しないことを世界で初めて単一細胞レベルで確認しました。本研究成果は2013年5月30日、欧州の薬理系科学雑誌『European Journal of Pharmacology』に掲載されました。
本研究成果により、心臓に問題を抱えたハイリスクの高血圧患者にも安全に使用できる高血圧治療薬の提供に結びつく可能性があります。
<業 績>本研究成果により、心臓に問題を抱えたハイリスクの高血圧患者にも安全に使用できる高血圧治療薬の提供に結びつく可能性があります。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科システム生理学分野の成瀬恵治教授と入部玄太郎講師の研究グループは、マウスの心臓から取り出した一個の心筋細胞を伸展し、その収縮力を測定する特殊な技術を用いて、カルシウム拮抗薬のアゼルニジピンおよびアムロジピンには心臓抑制の副作用がないことを世界で初めて細胞レベルで確認しました。
特にアゼルニジピンは、通常使用量の10倍もの量を投与しても収縮力は抑制されず、心臓への影響が非常に少ない薬剤であることがわかりました。また、両薬剤とも他の高血圧治療薬と併用しても心臓への影響は増強しないことも確認されました。
本研究では心筋細胞を一つだけ取り出して行うため、他の組織の分泌物や全身からの反射の影響を除外し、薬剤の影響のみを抽出し明らかにすることができます(図1)。

図1 今回の単一細胞による研究(右図)
<見込まれる成果>
今回の結果は、高血圧に対する効果的な薬剤併用療法の開発や、心臓に問題を抱えたハイリスクの高血圧患者に対する効果的な治療薬投与法に寄与することが期待されます。
<補 足>
高血圧治療薬の一つであるカルシウム拮抗薬は血管の平滑筋にカルシウムが入ることを防ぐことによって血管を弛緩させ、それにより血圧を下げます。一方で心臓を構成する心筋細胞は収縮するためにカルシウムを細胞内に取り込む必要があり、これがカルシウム拮抗薬によって阻害されてしまうと心臓の血液ポンプ機能が損なわれます。
本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)科研費(23300167, 22136008, 22240056)、第一三共株式会社の助成を受け実施しました。
発表論文はこちらからご確認いただけます
発表論文:Iribe G, Kaihara K, Ito H, Naruse K. Effect of azelnidipine and amlodipine on single cell mechanics in mouse cardiomyocytes. European journal of pharmacology. 2013
(doi: 10.1016/j.ejphar.2013.05.030)
報道発表資料はこちらをご覧ください
<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
システム生理学 講師
(氏名)入部 玄太郎
(電話番号)086-235-7115
(FAX番号)086-235-7430
(URL)https://www.okayama-u.ac.jp/user/med/phy2/index.htm