国立大学法人 岡山大学

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DNAを自己分解してリン栄養分にする生命現象の発見~種子植物の普遍現象・細胞内共生由来のDNAで~

2018年11月13日

◆発表のポイント

  • リン(P)は植物の三大栄養素の一つであり、肥料にも使われている一方、リン肥料の枯渇や水質汚染が懸念されています。
  • 坂本教授らの研究グループは、シロイヌナズナとポプラを用いて、細胞内のオルガネラDNAが分解され、リンの再利用に使われていることを解明。
  • オルガネラDNAの量をコントロールすることで、リン利用効率が向上した作物の育成につながることが期待されます。

 岡山大学資源植物科学研究所坂本亘教授と高見常明技術専門職員、神戸大学大学院理学研究科の三村徹郎教授、広島大学大学院理学研究科の草場信教授らの研究グループは、細胞内のDNAが自己分解され、リンの栄養分として再利用される生命現象を明らかにしました。
 植物の光合成を行う葉緑体や呼吸をつかさどるミトコンドリアは、太古の昔に細胞内共生により獲得した、バクテリア由来のオルガネラDNAをたくさん持っています。これらの、一見不要と思われる過剰のDNAは、リン栄養が欠乏した状態になると積極的に分解され、再利用されていることが今回の研究で明らかになりました。
 リンは植物の三大栄養素の一つで、21世紀にはリン肥料の枯渇や水質汚染が懸念されています。本研究成果により、DNA分解を介したリン酸利用効率の向上性が分かり、これらの知見を用いて養分利用を改善させた作物の改良にも結びつくことが期待されます。
 この研究成果は、11月12日英国時間午後4時(日本時間13日午前1時)に英国の科学誌「Nature Plants」誌で公開されます。

◆研究者からのひとこと
 岡山大学の研究所にアメリカから赴任して25年になります。大学で1年生に「植物生理学」の講義をすると、植物の不思議な能力に驚かされる、とよく言われます。植物の研究は、時間がかかりますが、我々の食糧や、衣類、紙、建材から地球環境の維持まで、人類に広く貢献しています
坂本教授

■論文情報
 論 文 名:Organelle DNA degradation contributes to the efficient use of phosphate in seed plants
 掲 載 紙:Nature Plants , 2018年11月13日
 著  者:Tsuneaki Takami, Norikazu Ohnishi, Yuko Kurita, Shoko Iwamura, Miwa Ohnishi, Makoto Kusaba, Tetsuro Mimura, and Wataru Sakamoto
 D O I:10.1038/s41477-018-029

<詳しい研究内容について>
DNAを自己分解してリン栄養分にする生命現象の発見~種子植物の普遍現象・細胞内共生由来のDNAで~

<お問い合わせ>
岡山大学資源植物科学研究所事務室
(電話番号)086-424-1661
(FAX番号)086-434-1206
(HP)www.rib.okayama-u.ac.jp/index-j.html

神戸大学大学院理学研究科
教授 三村徹郎
(電話番号)078-803-5708
(FAX番号)078-803-5708

広島大学大学院理学研究科
附属植物遺伝子保管実験施設
教授 草場 信
(電話番号)082-424-7490
(FAX番号)082-424-0738

年度