国立大学法人 岡山大学

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膵がんの線維化組織を試験管内で再現することに成功 メカニズムの解明に挑む

2018年12月20日

◆発表のポイント

  • 狩野教授らの研究室では、膵がんが薬では治りにくい原因の一つとして、膵がんの組織にコラーゲンやフィブロネクチンなどの線維が多く含まれること(線維化)に注目してきましたが、線維化の仕組みは詳しくわかっていませんでした。
  • 患者の膵がん組織の細胞を元に試験管内で線維化組織を構築し、線維の構築を解析することに成功。膵がんの予後と相関するとされる糖タンパク質SPARCが、線維化におけるフィブロネクチンの異常構築にかかわることを明らかにしました。
  • 膵がんの新たな治療戦略の開発への貢献が期待されます。

 岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科の狩野光伸教授と大学院医歯薬学総合研究科(薬)の田中啓祥助教らの研究グループは東北大学の正宗淳教授、慶應義塾大学の西原広史教授、大阪大学の松崎典弥准教授、弘前大学の下田浩教授、日本女子大学の佐藤香枝准教授らとの共同研究で、膵がんの特徴である線維化を、独自の三次元培養技術により試験管内で再現し、線維化において注目されるコラーゲンやフィブロネクチンなどの線維の異常構築のメカニズムを明らかにしました。本研究成果は、2018年11月17日付で英国科学雑誌「Biomaterials」のオンライン版に掲載されました。
 がん組織内の線維化は、膵がんなど難治のがん組織に認められ、抗がん剤の効果を減弱させるとされます。しかし、従来利用されてきた動物実験では作製に長い時間を要するなど、新規治療法の開発に向けた仕組みの研究は遅れています。この研究では、実際の膵がん患者の線維化組織の解析に基づき、膵がん患者由来の細胞を三次元的に培養し、試験管内で線維化組織を簡便に再構成することに成功しました。本研究を基盤に、線維化のメカニズム解析を推進することで、膵がんの新たな治療戦略の開発への貢献が期待されます。

◆研究者からのひとこと

 膵がんのみならず、治療が難しい多くの線維化疾患に応用できる技術だと考えています。多くの分野の研究者と協力しながら、これからも確かな知見に基づく新たな治療戦略の開発へとつなげていきます。
狩野教授

■論文情報
 論 文 名:Pancreatic stellate cells derived from human pancreatic cancer demonstrate aberrant SPARC-dependent ECM remodeling in 3D engineered fibrotic tissue of clinically relevant thickness
 掲 載 紙:Biomaterials
 著  者:Hiroyoshi Y. Tanaka, Kentaro Kitahara, Naoki Sasaki, Natsumi Nakao, Kae Sato, Hirokazu Narita, Hiroshi Shimoda, Michiya Matsusaki, Hiroshi Nishihara, Atsushi Masamune, Mitsunobu R. Kano
 D O I:10.1016/j.biomaterials.2018.11.023
 U R L:Pancreatic stellate cells derived from human pancreatic cancer demonstrate aberrant SPARC-dependent ECM remodeling in 3D engineered fibrotic tissue of clinically relevant thickness

<詳しい研究内容はこちら>
膵がんの線維化組織を試験管内で再現することに成功 メカニズムの解明に挑む

<お問い合わせ>
岡山大学 大学院ヘルスシステム統合科学研究科
教授 狩野 光伸

岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科(薬)
助教 田中 啓祥

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