国立大学法人 岡山大学

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安価で資源豊富な有機ナトリウム化合物を用いたクロスカップリング反応を開発

2019年03月29日

◆発表のポイント

  • 2つの異なる有機化合物から新たな有機化合物を合成する「クロスカップリング反応」の原料合成には、一般に高価で希少なリチウムが用いられていますが、安価で資源豊富なナトリウムを用いた方法を新たに開発しました。
  • 結合させる2つの原料の両方に、入手容易な有機塩化物を用いることも可能で、化学量論量の廃棄物としてはクリーンな塩化ナトリウムしか排出されません。
  • 空気中でも簡便に扱える金属ナトリウム分散体を用いることで実現しました。

 岡山大学大学院自然科学研究科(工)の浅子壮美助教、中島啓貴大学院生(博士前期課程2年)、髙井和彦教授らの研究グループは、有機ナトリウム化合物を用いる触媒的クロスカップリング反応を開発しました。本成果は、3月19日にイギリスの科学雑誌「Nature Catalysis」電子版に掲載されました。
 2010年ノーベル化学賞の受賞研究となったクロスカップリング反応は、私たちの豊かな暮らしを支える医薬品、農薬、機能性材料の製造に欠かせない基盤技術です。一般に、この反応に利用する原料(例えば有機亜鉛反応剤や有機ホウ素反応剤)を調製するためには、高価な有機臭化物・ヨウ化物や希少金属であるリチウムを含む化合物を用いる必要がありました。本研究により、安価な有機塩化物と地球上に豊富に存在するナトリウムを含む化合物を利用してクロスカップリング反応ができるようになりました。今後、現代社会を支える有用化合物のサステイナブル合成へ向けた応用研究が進展することが期待されます。本研究は株式会社神鋼環境ソリューションと共同で行ったものです。

◆研究者からのひとこと

比較的安全で使いやすい形の金属ナトリウム分散体が広く使われるようになると、リチウムやマグネシウムが主役であった有機合成化学が大きく変わると思います。このナトリウムを用いるクロスカップリング反応の研究はその第1弾と言えます。
髙井教授
研究開始当初は、他の多くの化学者と同じように、ナトリウムを有用な合成反応に利用できるとは想像もできませんでした。それほどナトリウムに対する偏見はまだ大きいです。今後も常識にとらわれず、ナトリウムを有効活用する研究を続けたいと思います。
浅子助教

■論文情報
 論 文 名:Organosodium Compounds for Catalytic Cross-Coupling
 掲 載 紙:Nature Catalysis
 著  者:Sobi Asako, Hirotaka Nakajima, Kazuhiko Takai
 D O I:10.1038/s41929-019-0250-6
 U R L:https://www.nature.com/articles/s41929-019-0250-6

<詳しい研究内容はこちら>
安価で資源豊富な有機ナトリウム化合物を用いたクロスカップリング反応を開発


<お問い合わせ>
岡山大学大学院自然科学研究科(工)
教授 髙井和彦
(電話番号)086-251-8097
(FAX番号)086-251-8094

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