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全身性エリテマトーデスの関連遺伝子と、その転写因子の同定に成功~エピジェネティクス機構(DNAメチル化)によるカテプシンE発現制御~

2019年03月29日

◆発表のポイント

  • 代表的な慢性炎症性自己免疫疾患であり、重篤な臓器障害を来しうる疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)は、未だ確立した治療法がありません。
  • SLE関連遺伝子としてカテプシンEを新規に同定し、その発現を制御する転写因子として、今回新たにメチル化感受性転写因子Kaisoを同定したほか、SLEにおけるカテプシンE の高発現がIL-10の発現上昇に関連することもわかりました。
  • 今後のSLEの病態解明と治療開発の一助となることが期待されます。

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)腎・免疫・内分泌代謝内科学分野の浅野澄恵医員、渡部克枝客員研究員、和田淳教授らの研究グループは、カテプシンEがSLEの発症に関わっていることを新規に同定しました。本研究成果は2月28日、イギリスの科学雑誌「Scientific Reports」の電子版に掲載されました。
 SLEは慢性炎症性自己免疫疾患で、 肺・心・腎などに重篤な臓器障害を来すことがあり、新規治療の開発が求められています。SLE の発症メカニズムとして、遺伝子の配列の違いによらないエピジェネティクスと呼ばれる機構の関与が注目されています。DNA 鎖の塩基の一つにメチル基を付加する「DNAメチル化」はその代表的なものですが、今回カテプシンE 遺伝子のDNAメチル化の変化と、遺伝子発現の増加を見出しました。
 カテプシンE は少なくともSLEにおけるIL-10の高発現に関連しており、更なるカテプシンE の機能解析によって、SLEの病態解明や新規治療ターゲットになりうることが期待されます。

◆研究者からのひとこと

若年で発症し、重症な臓器病変を来しうるSLEの新規治療薬の開発と病態解明は重要課題です。今回はエピジェネティクス機構に着目し、新規疾患関連遺伝子としてカテプシンE を同定しました。今後はカテプシンE の機能解析をすすめ、 創薬も視野に研究を進めたいと考えております。(和田)
和田教授   浅野医員

■論文情報
 論 文 名:Regulation of Cathepsin E gene expression by the transcription factor Kaiso in MRL/lpr mice derived CD4+ T cells
 邦題名「MRL/lprマウス由来CD4陽性T細胞におけるDNAメチル化感受性転写因子KaisoによるカテプシンEの発現制御」
 掲 載 紙:Scientific Reports
 著  者:Sumie Hiramatsu, Katsue S Watanabe, Sonia Zeggar, Yosuke Asano, Yoshia Miyawaki, Yuriko Yamamura, Eri Katsuyama, Takayuki Katsuyama, Haruki Watanabe, Mariko Takano-Narazaki, Yoshinori Matsumoto, Tomoko Kawabata, Ken-Ei Sada, and Jun Wada
 D O I:https://doi.org/10.1038/s41598-019-38809-y

<詳しい研究内容はこちら>
全身性エリテマトーデスの関連遺伝子と、その転写因子の同定に成功~エピジェネティクス機構(DNAメチル化)によるカテプシンE発現制御~

<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)
腎・免疫・内分泌代謝内科学分野
 教授 和田 淳
(電話番号)086-235-7232
(FAX番号)086-222-5214
(URL) http://daisan.med.okayama-u.ac.jp/

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