国立大学法人 岡山大学

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光電変換色素結合の薄膜(岡山大学方式の人工網膜 OUReP)がラット変性網膜に活動電位を発生させることを初めて示す

2019年06月28日

◆発表のポイント

  • ヒトの網膜色素変性と同じ網膜変性を来すラットから変性した網膜組織を取り出し、電極シャーレに置いて神経細胞の活動電位を記録する方法を確立しました。
  • 光電変換色素を結合したポリエチレン薄膜の人工網膜(岡山大学方式OUReP™)を、摘出したラットの変性網膜組織の上に乗せて光を当てると、神経細胞の活動電位を発生させることを初めて示しました。
  • 今回の研究成果は、人工網膜の有効性を改めて示し、医師主導治験に向かって弾みとなります。

 岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科(医)生体機能再生再建医学分野(眼科)の松尾俊彦准教授、同大学院自然科学研究科(工)高分子材料学分野の内田哲也准教授、岡山理科大学理学部の財部健一教授の医工連携研究1)グループは、「岡山大学方式の人工網膜OUReP™」が、遺伝性のラットから摘出した変性網膜組織に活動電位を発生させることを証明しました。本研究成果は日本生体医工学会の機関誌「Advanced Biomedical Engineering」に掲載されます。
 岡山大学方式の人工網膜OUReP™ は、色素結合薄膜型の人工網膜であり、2013年に米国で販売開始されたカメラ撮像・電極アレイ方式とはまったく異なる技術の“世界初の新方式”の人工網膜です。現在、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)と薬事戦略相談を積み重ね、「医薬品医療機器法(旧薬事法)」に基づく医師主導治験を岡山大学病院で実施する準備を進めています。

◆研究者からのひとこと

岡山大学方式の人工網膜 (OUReP) は光電変換色素分子とポリエチレン薄膜を使った医療機器です。網膜色素変性で失明した患者に対する治療として開発してきました。医療機器として承認を受ける目的で治験(臨床試験)を行う場合には、有効性、安全性、品質管理の3要素を満たす必要があります。安全性評価の全試験で毒性がなく、網膜変性ラットや黄斑変性サルで人工網膜を植込んで有効性を示しました。治験機器は岡山大インキュベータのクリーンルーム製造設備で品質管理を行いながら製造しています。ラットから摘出した変性網膜組織に人工網膜が活動電位を発生させることは、有効性に関する大きな評価点になると思います。
松尾准教授

■論文情報
論文名:Photoelectric Dye-Coupled Polyethylene Film: Photoresponsive Properties Evaluated by Kelvin Probe and In Vitro Biological Response Detected in Dystrophic Retinal Tissue of Rats掲載誌:Advanced Biomedical Engineering 2019;8:137-144著者: Toshihiko Matsuo, Mikako Sakurai, Keiko Terada, Tetsuya Uchida, Koichiro Yamashita, Tenu Tanaka, Kenichi TakarabeDOI: 10.14326/abe.8.137

■研究資金 
本研究は、日本医療研究開発機構 (AMED) 難治性疾患実用化研究事業の支援を受けて実施しました。


<詳しい研究内容について>
光電変換色素結合の薄膜(岡山大学方式の人工網膜 OUReP)がラット変性網膜に活動電位を発生させることを初めて示す


<お問い合わせ>
岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科
(岡山大学病院眼科)
准教授 松尾俊彦
(電話番号)086-251-8106 (FAX番号)086-251-8106

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