国立大学法人 岡山大学

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軽度認知障害の段階でも、治療同意能力は低下していることを明らかに 同意能力低下を主治医は見落としやすいことも判明

2019年06月28日

◆発表のポイント

  • 「軽度認知障害」は、認知機能低下はあるものの、未だ認知症には至っていない段階を意味し、認知症のリスク状態として注目されています。
  • 薬の開始を相談するという比較的簡単な治療場面でも、軽度認知障害の患者さんのうち30%程度が「治療同意能力」に欠けていることと、その同意能力欠損を医師が見落としやすいことを本研究は明らかにしました。
  • 患者さんが理解できるようなサポートを考えていくことが大切です。

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)精神神経病態学の大島悦子医師、寺田整司准教授らの研究グループは、薬の開始を相談するという比較的単純な治療場面においても、軽度認知障害の患者のうち30%程度で治療同意能力が失われていることを明らかにしました。また、治療同意能力が失われていた対象者のうち40%程度については、主治医は、患者さんの治療同意能力欠損に気付いていなかったことも分かりました。本研究成果は、世界老年精神医学会の学会誌である「International Psychogeriatrics」電子版に5月27日に掲載されました。
 軽度認知障害は、認知症には至らないが認知機能が有意に低下している状態で、認知症のリスク状態として注目されています。軽度認知障害の患者さんでどの程度治療同意能力が保たれているのかは、今まで報告はなく不明でした。今回の研究で、軽度認知障害の段階でも、口頭説明だけでは治療内容を十分理解し同意することができない患者さんが少なくないこと、さらに、主治医は患者さんの治療同意能力欠損を見逃しやすいことが明らかになりました。より多くの高齢者が医療を受けるようになる中で、認知機能が低下している患者さんが意に沿わない治療を受けることが減るように、安全に治療を受けられる環境作りが必要です。

◆研究者からのひとこと

「治療同意能力が無いから、治療を受ける当人ではなく代諾者に説明すればよい」というわけではありません。家族に同席してもらって説明をする事はもちろん必要ですが、理解力や思考力の低下をサポートできるように「文書を用意する」、「理解しやすい文章にする」、「イラストを用いる」など、同意取得の際に工夫が必要です。
寺田准教授


■論文情報
論 文 名:Competency of aMCI patients to consent to acetylcholine esterase treatment掲 載 紙:International Psychogeriatrics著  者:Etsuko Oshima, Shintaro Takenoshita, Risa Iwai, Mayumi Yabe, Nao Imai, Makiko Horiuchi, Naoya Takeda, Yosuke Uchitomi, Norihito Yamada, Seishi TeradaD O I: 10.1017/S1041610219000516U R L:https://doi.org/10.1017/S1041610219000516


■研究資金
 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(基盤研究C・17K10331、研究代表:大島 悦子)、及び慈圭会精神医学研究所研究費の支援を受けて実施しました。


<詳しい研究内容について>
軽度認知障害の段階でも、治療同意能力は低下していることを明らかに
同意能力低下を主治医は見落としやすいことも判明



<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医) 精神神経病態学
准教授  寺田整司
(電話番号)086-235-7242 (FAX)086-235-7246

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