国立大学法人 岡山大学

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難病の肺動脈性肺高血圧症で、三次元培養技術により病理モデル再現に成功 新規治療薬探索への貢献に

2020年05月26日

◆発表のポイント

  • 肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、息苦しさや息切れなどが症状の指定難病です。肺動脈の壁の平滑筋細胞が異常に増殖することで、肺動脈の壁の中膜が厚くなり、動脈が狭くなることが原因ですが、主に対症療法しかないため、治療薬の開発が期待されています。
  • PAHの状態を試験管内で再現できる簡便なモデルの確立はこれまで困難で、治療薬の開発に支障を来たしていましたが、今回PAH患者から提供していただいた肺動脈の平滑筋細胞を三次元培養することで、肺動脈中膜肥厚を試験管内で再現することに成功しました。
  • PAHに対する新規治療薬探索への貢献が期待されます。

 岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科の狩野光伸教授と大学院医歯薬学総合研究科(薬)の田中啓祥助教らの研究グループは、国立病院機構岡山医療センターの小川愛子医師ならびに松原広己医師、東北大学の山本雅哉教授らとの共同研究で、三次元培養技術を利用し、難病である肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療薬開発に応用できる新たな実験法を開発しました。具体的には、PAHで起こる肺動脈壁の中膜が厚くなる状態を試験管内で作りだすことに成功し、これを抑えられる薬剤の開発に応用できる可能性を示しました。本研究成果は、2020年5月20日付でスイスの科学雑誌「Frontiers in Bioengineering and Biotechnology」に掲載されました。
 PAHでは、肺動脈の中が狭くなり、全身から戻ってきた血液が、酸素を取り込む肺を流れにくくなる結果、息苦しさや動いた時の息切れが見られ、進行すると、右心不全に至ります。主な原因は、平滑筋細胞が異常に増えて肺動脈の壁の中膜が厚くなることとされ、これを抑えられる方法があれば治療法になると考えられています。しかし、この肺動脈中膜肥厚の簡便な試験管内のモデルはこれまでなく、治療できる薬剤を探すことは困難でした。本研究で確立した肺動脈中膜肥厚の試験管内モデルを基盤とした、PAHに対する新規治療薬探索への貢献が期待されます。

◆研究者からのひとこと

本研究の成果により、難病の肺高血圧症に効く新しい治療薬が、少しでも早く作られるようになることを期待しています。
狩野教授



■論文情報論 文 名:3D in vitro model of vascular medial thickening in pulmonary arterial hypertension掲 載 紙:Frontiers in Bioengineering and Biotechnology著  者:Chiharu Morii*, Hiroyoshi Y. Tanaka*, Yasuhisa Izushi, Natsumi Nakao, Masaya Yamamoto, Hiromi Matsubara, Mitsunobu R. Kano†, Aiko Ogawa† (*: equal contribution; †: joint supervision)D O I:10.3389/fbioe.2020.00482


<詳しい研究内容について>
難病の肺動脈性肺高血圧症で、三次元培養技術により病理モデル再現に成功 新規治療薬探索への貢献に


<お問い合わせ>
岡山大学 大学院ヘルスシステム統合科学研究科
教授 狩野 光伸

岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科(薬)
助教 田中 啓祥

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