国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISHCHINESE
MENU

膵臓がんで「線維化」が発生するメカニズムを解明 難治性がんの新たな治療戦略開発へつながる成果

2020年05月26日

◆発表のポイント

  • 膵臓がんは薬の治療が効きにくく難治です。がん組織中にコラーゲンなどが蓄積する「線維化」が一因と考えられ、治療の標的として期待されています。しかし、膵がんで線維化が起こるメカニズムは、今まで良い実験方法も足りず、詳しくわかっていませんでした。
  • 独自の細胞三次元培養技術を応用して、膵臓がん組織を試験管内で作ることに成功し、膵臓がんで線維化が進展するメカニズムを解析しました。
  • がん組織中の線維化を標的とした、新たな膵がんの治療戦略開発への貢献が期待されます。

 岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科の狩野光伸教授と大学院医歯薬学総合研究科(薬)の田中啓祥助教らの研究グループは、東北大学の正宗淳教授、大阪大学の松崎典弥教授らとの共同研究で、独自の三次元培養技術を開発し膵臓がんのミクロな組織構造を試験管内で再構成することに成功し、がん組織中で線維が作られ悪化するメカニズムを明らかにしました。本研究成果は、2020年4月30日付で英国科学雑誌「Biomaterials」のオンライン版に掲載されました。
 膵臓がんの組織には線維化が起きやすく、抗腫瘍免疫や抗がん剤の効果を弱めているといわれます。しかし、患者間で線維化の程度はさまざまです。こうした違いが病態の進行や治療の効きやすさに及ぼす影響については、適切な実験モデルがなかったために解明が遅れています。今回の研究では、まず膵臓がん患者の標本からがん組織を解析し、患者間での線維化の程度の違いを明らかにしました。そして開発した三次元培養技術を応用し、線維化の程度がさまざまな膵がん組織を、試験管内で自在に再現することに成功しました。本研究を基盤に、膵臓がんにおける線維化のメカニズム解明や新たな治療戦略開発への貢献が期待されます。

◆研究者からのひとこと

 田中助教と大学院生の栗原さん、そして学部学生の中澤さんが知恵を出し合って頑張った成果です。この研究で作られた技術で、膵臓がんを治しにくくしている線維化を標的にした、新しい治療の方法を開発できるようになっていくことを期待しています。
狩野教授

■論文情報論 文 名:Heterotypic 3D pancreatic cancer model with tunable proportion of fibrotic elements掲 載 紙:Biomaterials著  者:Hiroyoshi Y. Tanaka, Tsuyoshi Kurihara, Takuya Nakazawa, Michiya Matsusaki, Atsushi Masamune, Mitsunobu R. KanoD O I:10.1016/j.biomaterials.2020.120077U R L:Heterotypic 3D pancreatic cancer model with tunable proportion of fibrotic elements - ScienceDirect


<詳しい研究内容について>
膵臓がんで「線維化」が発生するメカニズムを解明 難治性がんの新たな治療戦略開発へつながる成果


<お問い合わせ>
岡山大学 大学院ヘルスシステム統合科学研究科
教授 狩野 光伸

岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科(薬)
助教 田中 啓祥

年度