国立大学法人 岡山大学

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アルツハイマー病患者さんの不安定な精神状態へのより良い処方薬についての研究(岡山うつアパシープロジェクト)

2020年07月30日

◆発表のポイント

  • 岡山大学病院脳神経内科のアルツハイマー病患者さんで、うつスコアやアパシースコアの高い人を対象に、その症状を改善するのに効果的な処方薬について研究しました。
  • 同じ抗うつ剤でも、レクサプロ®はアルツハイマー病のうつ症状が強い患者に、そしてジェイゾロフト®は同病のアパシー症状が強い患者におすすめの処方であるのかもしれない、という興味深い結果が出ました。
  • うつ症状とアパシーそれぞれに注目し薬の効果を確認した研究報告は世界で初めてです。

 アルツハイマー病患者にはうつ症状やアパシーといった意欲低下症状が認められます。アパシー(apathy)とは、ギリシャ語のa=失う、pathos=感情・苦悩を組み合わせた言葉であり、喜怒哀楽の感情がなくなった状態を指します。アパシーは認知症初期から認められる人が多いとされる、うつ状態と似た精神症状です。うつ症状は、やらなければならないといった気持ちはあるのにやる気が出ないことに患者自身が苦しみ、アパシーは患者自身の苦しみはないのですが、そのぼうっとしている患者の様子を見て家族など介護者がどうしたのだろうと心配になる、という特徴があります。
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)の阿部康二教授と武本麻美助教の研究グループは同大学病院に通うアルツハイマー病患者を対象としてうつ・アパシーといった精神症状の改善に効果がある抗うつ薬は何であるか研究してみました。その結果、同じ抗うつ剤であっても、エスシタロプラム(レクサプロ®)はうつ症状改善に、セルトラリン(ジェイゾロフト®)はアパシーの改善により強い効果があるようだという結果を得ました。
 世界で初めての報告であり、2020年6月15日、米国の「Journal of Alzheimer’s disease(JAD)」にオンライン上で掲載され、7月刊行の学会誌に掲載されます。

◆研究者からのひとこと

アルツハイマー病患者さんの精神症状に対してより細やかに処方薬の選択を行うことで、心が元気になり、その人らしい人生を送って頂けるきっかけになる研究成果かもしれません!
阿部教授
アルツハイマー病患者さんの心の状態が、いかに奥深いものかという事が今回の研究でよく分かりました!
武本助教

■論文情報論 文 名:The efficacy of sertraline, escitalopram, and nicergoline in the treatment of depression and apathy in Alzheimer’s disease: The Okayama Depression and Apathy Project (ODAP)掲 載 紙:Journal of Alzheimer’s disease著  者:Mami Takemoto, Yasuyuki Ohta, Nozomi Hishikawa, Toru Yamashita, Emi Nomura, Keiichiro Tsunoda, Ryo Sasaki, Koh Tadokoro, Namiko Matsumoto, Yoshio Omote, and Koji AbeD O I:10.3233/JAD-200247. Online ahead of print.


<詳しい研究内容について>
アルツハイマー病患者さんの不安定な精神状態へのより良い処方薬についての研究(岡山うつアパシープロジェクト)


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学
教授 阿部康二
(電話番号)086-235-7365
(FAX)  086-235-7368

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学
助教 武本麻美
(電話番号)086-235-7365
(FAX)  086-235-7368


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