国立大学法人 岡山大学

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大麦のカドミウム集積を低減する因子の発見

2020年08月14日

◆発表のポイント

  • カドミウムは毒性の高い重金属で、イタイイタイ病の原因物質です。食物連鎖を介して、我々の健康に害を与えますが、今回の研究で、オオムギのカドミウム集積を低減させる因子を同定しました。
  • オオムギのカドミウム集積の品種間差を利用して、その原因遺伝子HvHMA3を単離しました。またこの遺伝子の発現を制御する因子を同定しました。
  • この制御因子を他の品種に導入して、カドミウム集積の少ない安全な品種の作成に成功しました。

 岡山大学資源植物科学研究所の馬建鋒教授らの研究グループはオオムギのカドミウム集積を制御する因子を世界で初めて同定し、その機能を解明しました。また、この因子を導入したカドミウム低集積品種の育成に成功しました。本研究成果は8月13日ロンドン時間16:00(日本時間14日0:00)、世界のトップジャーナル「Nature Food」にOnlineにて公開されました。
 カドミウムは毒性の強い重金属で、イタイイタイ病を引き起こす原因物質として知られています。現在でもカドミウム汚染は様々な原因で世界的に依然として大きな問題となっています。本研究では世界の穀物生産量の4位を占めるオオムギを用いて、カドミウム集積の品種間差の要因を同定したところ、根の液胞膜に局在するカドミウム輸送体の遺伝子HvHMA3の発現を制御する因子を発見しました。これはHvHMA3の上流に挿入されたトランスポゾンの一種で、このトランスポゾンはプロモーターの役割を果たし、HvHMA3の発現レベルを倍近く高めることができます。この因子を繰り返し交配でビールオオムギの主要品種に導入したところ、種子のカドミウム集積を大幅に減少させることができました。本研究成果は、カドミウムの少ない安全なオオムギ生産に寄与できます。

◆研究者からのひとこと

この研究は10年近くかかり、皆さんの協力の下、やっと発表することができました。生理学的解析から、遺伝子の単離、機能解析、低カドミウム品種の育成などたくさんの実験結果が含まれています。将来世界でカドミウムの少ない安全なオオムギ生産に貢献できたらうれしいです。
馬教授

■論文情報論 文 名:Breeding for low cadmium barley by introgression of a Sukkula-like transposable element掲 載 紙:Nature Food著  者:Gui Jie Lei, Miho Fujii-Kashino, De Zhi Wu, Hiroshi Hisano, Daisuke Saisho, Fenglin Deng, Naoki Yamaji, Kazuhiro Sato, Fang-Jie Zhao, and Jian Feng MaD O I:doi.org/10.1038/s43016-020-0130-x

<詳しい研究内容について>
大麦のカドミウム集積を低減する因子の発見

<お問い合わせ>
岡山大学資源植物科学研究所
教授  馬 建鋒
(電話・FAX)086-434-1209

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