国立大学法人 岡山大学

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コーヒーは虫のオスにとって精力剤なのか~カフェインを飲んだオスは、求愛にせっかちになる!~

2020年10月29日

◆発表のポイント

  • カフェインはドーパミンを活性化させる作用があり、私たちヒトの気分を高揚させる働きがあることはよく知られています。昆虫でもカフェインがハエを活性化させ睡眠に影響することや、ハチの学習記憶能力を向上させることが知られていますが、カフェインが交尾行動に及ぼす影響は調べられていませんでした。
  • カフェインを砂糖水に混ぜコクヌストモドキという昆虫に飲ませてみたところ、カフェインを飲んだオスはメスへの求愛がせっかち(活発)になり、メスに早くマウントし、交尾器も早く突出させました。しかし、カフェインを飲ませたオスの精子がより多くの卵を受精させることはありませんでした。
  • カフェインが昆虫のオスにとって精力剤的な一面があることを世界で初めて明らかにしました。

 岡山大学大学院環境生命科学研究科の大学院生と宮竹貴久教授は、米・小麦類の貯穀害虫であるコクヌストモドキに砂糖水に混ぜたカフェインを経口摂取させ、交尾行動と精子競争力を調べました。その結果、カフェインを飲んだオスは、飲んでいないオスに比べ、容器に入れてからメスに求愛するまでの時間とメスにマウントするまでの時間が短くなり、交尾器も早く突出させることがわかりました。つまり、カフェインを摂取すると一連の求愛行動のパターンが加速することになります。さらに突然変異体の黒色ミュータント系統(注1)を使って、カフェインを飲ませたオスと飲ませていないオスを一匹のメスと交尾させ、どちらのオスの精子が受精に使われたかも調べたところ、カフェインの摂取が精子の卵受精力に影響することはありませんでした。これらの研究成果は9月26日、Wiley出版会の国際雑誌「Ethology」のResearch Articleとして掲載されました。
 昆虫の交尾行動にカフェインが影響を及ぼすことは新しい発見です。またカカオや茶に含まれるカフェインが自然のなかで、どのような機能を持つかは不明です。植物がなぜカフェインを作るように進化したのかについても示唆を与える可能性があります。

◆研究者からのひとこと

 研究のきっかけはどこから始まるかわかりません。コーヒーを飲むと人は元気になるけど、虫もコーヒー(カフェイン)を飲むと元気になるのだろうか? という素朴な疑問からこの研究はスタートしました。交尾にこのような影響が見られたのは驚きました。
宮竹教授

■論文情報
論文名:Effects of caffeine on mating behavior and sperm precedence in Tribolium castaneum
邦題名「コクヌストモドキにおける交尾行動と精子優先度に及ぼすカフェインの効果」

掲載誌:Ethology
著者:Ji Yuhao, Yuki Ryuji, Kentarou Matsumura, Takahisa Miyatake
DOI:https://doi.org/10.1111/eth.13094


<詳しい研究内容について>
コーヒーは虫のオスにとって精力剤なのか~カフェインを飲んだオスは、求愛にせっかちになる!~

<お問い合わせ>
岡山大学大学院環境生命科学研究科(農)
教授 宮竹 貴久
(電話番号)086-251-8339 (FAX番号)086-251-8388

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