国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISHCHINESE
MENU

神経活動に必要な遺伝子が、ゲノムDNAの結び目でON-OFFされていることを明らかに

2020年10月29日

◆発表のポイント

  • DNAに作用する酵素の一種DNAトポイソメラーゼIIβが、今までに知られていなかった役割をもつことを明らかにしました。
  • この酵素は神経細胞のゲノムDNAにある繰り返し配列の間の結び目を解くことによって、それまで眠っていた神経機能に必須な遺伝子群を活性化することが分かりました。
  • これらの遺伝子の多くが自閉症などの発達障害で異常が見られることから、その発症のメカニズムや治療法の解明につながることが期待されます。

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)の筒井研名誉教授と筒井公子名誉教授の研究グループは、全ゲノムを対象とした新しい実験技術を開発して、完成間近の神経細胞の細胞核で今までに知られていなかった遺伝子活性の調節機構が働いていることを明らかにしました。この研究成果は10月29日の日本時間19:00、英国の科学誌「Scientific Reports」のArticleで公開されました。
 DNAに作用する酵素の一種トポイソメラーゼIIβの働きは、狭いDNA領域に限られていると信じられていましたが、私たちの研究からずっと離れた領域間にも作用することが明確になりました。遺伝子を含まないジャンクDNAと呼ばれてきたゲノム領域にある、繰り返し配列の機能にも新たな展望を与える発見です。
 私たちの発見は直ちに人間社会に役に立つといった性格のものではありませんが、科学的に興味深いものでありますし、この知見から出発して未開拓の研究分野が展開されるものと期待しています。また、これらの遺伝子の多くが自閉症などの発達障害で異常が見られることから、その発症のメカニズムや治療法の解明につながることが期待されます。

◆研究者からのひとこと

 この研究は私たちが1985年頃に始めた研究テーマ「トポイソメラーゼと神経細胞分化」の延長線上にあります。実は今回の論文は10年くらい前に始めた研究に基づいています。どの分野でも同じですが、先行する研究が作り上げた確固とした「常識」が存在し、これを打ち破るには大きな困難を伴います。私たちの論文も審査員の根強い誤解と偏見にあい、出版できるまでに予想外の時間がかかりました。この間に辛抱強く付き合ってくださった、宮地まり、古田良平、細谷修の各氏には格別に感謝いたします。
筒井研名誉教授(左)、筒井公子名誉教授(右)

■論文情報
論 文 名:Topoisomerase IIβ targets DNA crossovers formed between distant homologous sites to induce chromatin opening
掲 載 紙:Scientific Reports
著  者: Mary Miyaji, Ryohei Furuta, Osamu Hosoya, Kuniaki Sano, Norikazu Hara, Ryozo Kuwano, Jiyoung Kang, Masaru Tateno, Kimiko M. Tsutsui*, Ken Tsutsui* (*Corresponding Author)
D O I:10.1038/s41598-020-75004-w

<詳しい研究内容について>
神経活動に必要な遺伝子が、ゲノムDNAの結び目でON-OFFされていることを明らかに

<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)
名誉教授 筒井公子
(電話番号)086-223-6441(伝言を残してください)
(FAX)086-223-6441

年度