国立大学法人 岡山大学

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“ホウ素”と“ペプチド”でがんをやっつける!がん治療法・BNCTに利用可能なホウ素薬剤の高性能な新薬を開発

2020年12月17日

◆発表のポイント

  • BNCTは2020年に世界初の病院での治療がスタートしたがん治療法で、ホウ素薬剤を点滴し、ホウ素が取り込まれたがんの部位に中性子を照射する新しいタイプの治療法です。BNCTの成否は、いかにしてホウ素薬剤を効率的かつ確実にがん細胞へ取り込ませるかという点が担っています。
  • ペプチドにより構成されるナノ粒子と、従来のホウ素薬剤を混合するだけで、容易に作成可能な世界初のホウ素薬剤を開発しました。
  • この薬剤は、BSHには無いがん組織への高い集積性と、がん細胞内部まで到達できる新しい機能を有しており、またBSHと比較して数十倍高い細胞内取り込みになることを確認しました。

※本件は、岡山大学が「革新的BNCT用ホウ素薬剤OKD-001の研究開発」に関する共同研究契約締結について記者発表(2018/11/2)を行った研究成果に関連するものです。

 岡山大学中性子医療研究センターの道上宏之准教授らの研究グループは、近畿大学、京都大学との共同研究で、がん治療法のBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)に利用可能な世界初のホウ素薬剤の開発に成功しました。この研究成果は11月11日、国際科学誌「Journal of Controlled Release」にResearch Article として掲載されました。
 BNCTは、がん患者へホウ素薬剤を点滴し、目標とするがん部位に到達したタイミングで中性子を照射し、ホウ素と中性子の核反応によりがん細胞を殺傷する、新しいタイプのがん治療法です。2020年6月より日本国内で、再発の頭頚部がんに対し保険診療が開始されました。
 BNCTの成否を分けるのは、ホウ素薬剤をいかにして、効率的に、確実にがん細胞へ取り込ませるかという点です。今回我々は、ペプチドにより構成されるナノ粒子とホウ素薬剤(BSH)を混合するだけで容易に作成可能な世界初のホウ素薬剤を開発しました。この薬剤は、従来のホウ素薬剤(BSH)では難しかった、がん組織への高い集積性と、がん細胞内部まで到達するという、新しい機能を有しています。また、従来薬剤(BSH)と比較して数十倍高いホウ素濃度の細胞内取り込みになることを確認しました。今回利用したペプチドナノ粒子は、ライフサイエンス分野で実用化開発を行っている株式会社スリー・ディー・マトリックスより無償提供いただいており、今後の共同研究開発を目標に活動しています。今回の発明は、BNCTがん治療に使用可能な新しいホウ素薬剤の候補薬剤へ寄与できることが期待されます。

◆研究者からのひとこと

ホウ酸団子などにも使われるホウ素と、アミノ酸7個からなるペプチドを利用した、がん治療に用いる新しい治療薬を開発しました。BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)は、2020年日本で医療化スタートした、世界初のがん治療法です。いろいろながん治療法と組み合わせることも可能な、非常に発展性の高い分野です。この技術により、がんが治る人が一人でも増えるように、これからも研究活動を頑張りたいと思います。
道上准教授

■論文情報
論 文 名:Self-assembling A6K peptide nanotubes as a mercaptoundecahydrododecaborate (BSH) delivery system for boron neutron capture t (BNCT)
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)へ利用可能なホウ素薬剤(BSH)運搬のための自己集 合A6Kペプチドナノチューブを用いた創薬
掲 載 紙:Journal of Controlled Release (ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース)著  者:Hiroyuki Michiue, Mizuki Kitamatsu, Asami Fukunaga, Nobushige Tsuboi, Atsushi Fujimura, Hiroaki Matsushita, Kazuyo Igawa, Tomonari Kasai, Natsuko Kondo, Hideki Matsui, Shuichi FuruyaD O I:10.1016/j.jconrel.2020.11.001


<詳しい研究内容について>
“ホウ素”と“ペプチド”でがんをやっつける!がん治療法・BNCTに利用可能なホウ素薬剤の高性能な新薬を開発


<お問い合わせ>
岡山大学 中性子医療研究センター
准教授  道上 宏之
(電話番号)086-235-7785
(FAX)  086-235-7784

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