国立大学法人 岡山大学

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初期太陽系における地球型惑星の材料物質の進化を解明:地球質量の半分を占めるケイ素と酸素の同位体組成からの証拠

2021年05月21日

◆発表のポイント

  • 地球型惑星の主要な材料と考えられる、エンスタタイト・コンドライト隕石に含まれるコンドリュールについて、ケイ素および酸素の同位体組成を分析し、太陽系の誕生から地球型惑星の母体となった微惑星が形成するまでの、ケイ素と酸素の進化過程を解明しました。
  • 地球型惑星や小惑星の化学組成の違いが、始原的隕石であるコンドライトを単純に混合した化学組成を反映しているのではなく、原始太陽系円盤において、それぞれの材料物質が集積した場の塵とガス全体の組成によって決定づけられていることを示しました。
  • これまで考えられてきた地球型惑星の化学組成の再検討が必要であると示唆されます。

 岡山大学惑星物質研究所・The Pheasant Memorial Laboratory(PML)の田中亮吏教授、Christian Potiszil助教、中村栄三教授(現 自然生命科学研究支援センター教授(特任))は、エンスタタイト・コンドライト隕石に含まれるコンドリュールおよびユレイライト隕石の酸素とケイ素の同位体組成分析を行うことにより、地球型惑星の約50%を構成するこれらの元素の、原始太陽系円盤での進化過程を明らかにしました。
 地球型惑星の形成モデルには、エンスタタイト・コンドライトが主要な成分であるとする説や、ユレイライトに炭素質コンドライトが混合してできたとする説などがあります。しかしいずれのモデルについても、地球の岩石層や太陽系の天体などにおけるケイ素や酸素の同位体組成比に矛盾が生じ、うまく説明ができていませんでした。
 本研究成果は、始原的隕石の組成が、必ずしも惑星の化学組成をそのまま反映しているものではないことを意味しており、これまで行われてきた地球型惑星の形成過程と化学組成の研究に新たな示唆を与えるものです。
 本研究成果は5月20日、アメリカ天文学会の国際科学雑誌「The Planetary Science Journal」オンライン版に掲載されました。

◆研究者からのひとこと

地球誕生の歴史や地球内部構造を研究している過程で浮かんだ、「これまでに推定されてきた地球の化学組成はどこまで正しいのだろうか」という疑問をもとに、この研究をスタートさせました。今後も、当研究所で開発してきた地球惑星物質総合解析システム(CASTEM)を駆使して、太陽系と地球の誕生の謎をひも解いていく予定です。
田中教授

■論文情報
論文名:Silicon and Oxygen Isotope Evolution of the Inner Solar System
掲載紙:The Planetary Science Journal
著 者:Ryoji Tanaka, Christian Potiszil, and Eizo Nakamura
D O I:https://doi.org/10.3847/PSJ/abf490
U R L:https://iopscience.iop.org/article/10.3847/PSJ/abf490

<詳しい研究内容について>
初期太陽系における地球型惑星の材料物質の進化を解明:地球質量の半分を占めるケイ素と酸素の同位体組成からの証拠


<お問い合わせ>
岡山大学惑星物質研究所 教授 田中亮吏
TEL: 0858-43-3748
FAX:0858-43-3748

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