国立大学法人 岡山大学

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機能性色素NK-4の網膜視細胞の保護効果を発見!

2021年08月31日

◆発表のポイント

  • 岡山市の株式会社林原(NAGASE グループ)が製造する機能性色素NK-4は、生理機能を有するシアニン色素で、一般用医薬品(第3類医薬品)「錠剤ルミン®A」の有効成分クリプトシアニンO.A.コンプレックスの主成分として知られています。
  • 網膜色素変性のモデルラット(RCSラット)でアポトーシスによる網膜視細胞死を抑制する神経保護作用がNK-4にはあることを見出しました。
  • メッセンジャーRNA(mRNA)の網羅的発現解析(RNA-Seq)(1)の結果、NK-4の視細胞保護作用には過酸化を抑制する金属イオンの代謝経路などが関与することが明らかになりました。

 岡山大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域(医)生体機能再生再建医学分野(眼科)の松尾俊彦教授、同大学院ヘルスシステム統合科学研究科の劉詩卉研究員、同学術研究院医歯薬学域(医)脳神経機構学分野の宮地まり助教および細谷修助教は、岡山市の株式会社林原が製造するNK-4の視細胞保護作用を調べました。NK-4を網膜色素変性のモデルラット(RCSラット)の眼球の硝子体内に注射すると、本来なら死滅する網膜の視細胞が死なないことを見つけました。その分子機構を明らかにするため、NK-4を眼球に注射した網膜組織と対照液を注射した網膜組織のメッセンジャーRNA(mRNA)の発現を網羅的に調べました。その結果、金属イオンの代謝経路などが視細胞死の抑制効果に関与していることが分かりました。
 本研究成果は、2021年7月19日、スイスの薬学誌「Pharmaceuticals」に掲載されました。
 NK-4は、一般用医薬品「錠剤ルミン®A」の有効成分クリプトシアニンO.A.コンプレックスの主成分で安全が確認されており、長年使用されてきました(1951年発売)。網膜色素変性など変性疾患には治療薬がなく、NK-4は疾患の進行を遅らせて視力を維持する医薬品の候補になると期待されます。

◆研究者からのひとこと

劉詩卉さんが医学系の宮地まり先生、細谷修先生に組織染色やメッセンジャーRNAの網羅的発現解析などを教えてもらいながら完成した研究です。2018年~2020年の3年間、学術研究院自然科学学域の内田哲也准教授が代表を務めた「特別電源所在県科学技術振興事業補助金(岡山県)」の分担研究の成果です。岡山の地の利を活かして、多くの研究者の協力で網膜神経変性を遅らせる治療薬を実現していきたいと思います。
松尾俊彦 教授    劉詩卉 研究員

■論文情報
論 文 名:The effect of cyanine dye NK-4 on photoreceptor degeneration in a rat model of early-stage retinitis pigmentosa.
掲 載 紙:Pharmaceuticals
著  者:Shihui Liu, Toshihiko Matsuo, Mary Miyaji, Osamu Hosoya
D O I:https://doi.org/10.3390/ph14070694
U R L:The effect of cyanine dye NK-4 on photoreceptor degeneration in a rat model of early-stage retinitis pigmentosa.


<詳しい研究内容について>
機能性色素NK-4の網膜視細胞の保護効果を発見!


<お問い合わせ>
 岡山大学学術研究院 ヘルスシステム統合科学学域
 (岡山大学病院眼科)
 教授 松尾俊彦

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