国立大学法人 岡山大学

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ゲノム編集技術によってオオムギの種子休眠の長さを調節することに成功!ビール醸造に適した穂発芽に強いオオムギの開発に期待

2021年09月29日

◆発表のポイント

  • ゲノム編集技術(CRISPR/Cas9法)により、種子発芽を促進する遺伝子Qsd1およびQsd2が働かない変異オオムギを作成しました。
  • 変異オオムギは野生型(元の品種)に比べて発芽が抑えられるので、種子の休眠が長くなっていることが示されました。
  • 本研究成果は、ビール醸造に適した品種や収穫前に発芽してしまう「穂発芽(ほはつが)」に強い品種の開発に貢献します。

 岡山大学資源植物科学研究所の久野裕准教授、農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)およびドイツ・ライプニッツ植物遺伝作物学研究所の国際共同研究グループは、ゲノム編集技術CRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン)法によって種子休眠性遺伝子への変異導入に成功し、種子休眠が長くなったオオムギを開発しました。これらの成果は、8月29日、英国の植物バイオテクノロジー専門誌「Plant Biotechnology Journal」のResearch Articleとしてオンラインで早期公開されました。
 ビールやウイスキーの原料となる醸造用オオムギは、種子休眠が短く一斉に発芽する品種が選ばれてきました。一方で、日本などの収穫期に雨の多い地域では、休眠が短い品種が収穫前に発芽してしまう「穂発芽」が発生し、品質低下などの農業被害が出てしまいます。
 オオムギの生産や醸造業にとって、種子休眠のバランスは非常に重要です。本研究成果によって、ゲノム編集技術を活用してオオムギの種子休眠の長さを調節する可能性が示され、穂発芽に強く醸造にも適した品種の開発が期待されます。

◆研究者からのひとこと

 国内で初めてオオムギのゲノム編集に成功しました。最初は失敗続きで心も折れそうになりましたが、研究支援員、共同研究者そして様々な研究費によって長年支えて頂きました。この場を借りて感謝申しあげます。
 研究室では大学院生を募集しています。岡山大植物研(倉敷)は、研究するには最適の場所です。私たちと一緒に研究しませんか?

久野 准教授

■論文情報
論 文 名:Regulation of germination by targeted mutagenesis of grain dormancy genes in barley
掲 載 紙:Plant Biotechnology Journal
著  者:Hiroshi Hisano1(責任著者), Robert E. Hoffie 2, Fumitaka Abe3, Hiromi Munemori1, Takakazu Matsuura1, Masaki Endo4, Masafumi Mikami4, Shingo Nakamura3, Jochen Kumlehn 2, Kazuhiro Sato1
1 Institute of Plant Science and Resources, Okayama University, Japan (岡山大学資源植物科学研究所)
2 Leibniz Institute of Plant Genetics and Crop Plant Research (IPK), Germany (ドイツ・ライプニッツ植物遺伝作物研究所)
3 Institute of Crop Science, NARO, Japan (農研機構・作物研究部門)
4 Institute of Agrobiological Sciences, NARO, Japan (農研機構・生物機能利用研究部門)

D O I:10.1111/pbi.13692
U R L:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/pbi.13692


<詳しい研究内容について>
ゲノム編集技術によってオオムギの種子休眠の長さを調節することに成功!ビール醸造に適した穂発芽に強いオオムギの開発に期待

<お問い合わせ>
岡山大学資源植物科学研究所
准教授 久野 裕
(電話番号)086-434-1243 (FAX)086-434-1243


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