国立大学法人 岡山大学

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穂の白いオオムギ突然変異体で光合成研究

2021年10月26日

◆発表のポイント

  • 正常なオオムギの穂は緑色で、光合成をするとみられていますが、詳細は不明でした。今回、穂だけが白い(albino lemma 1) alm1突然変異体を用いて、光合成能力を測定しました。
  • 穂の白いalm1突然変異体では、正常型に比べ、穂の光合成が34%低下しました。種子重が15.8%減少したことから、オオムギでは穂の光合成が種子の登熟に重要とわかりました。
  • オオムギの穂が白いalm1突然変異体は、葉緑体の発達を制御するGolden2-like2 (GLK2)転写因子をコードする遺伝子の異常によることを解明しました。

 オオムギには穂が葉緑素を欠き白くなるalm1突然変異体があることが、60年以上前に岡山大学・農業生物研究所の高橋隆平教授により報告されていました。しかし、遺伝子の実体は不明でした。今回、岡山大学・資源植物科学研究所の武田真教授と坂本亘教授の共同研究グループは、遺伝子解析により、オオムギalm1突然変異体はGOLDEN-2-LIKE(HvGLK2)転写因子遺伝子の異常によることを解明しました。さらに、オオムギのalm1突然変異体を活用し、穂の光合成活性を測定しました。正常な緑色の穂をしたオオムギに比べ、穂が白いalm1突然変異体では穂の光合成は34%低下しました。このことにより種子の重さが15.8%低下したとみられました。今回の研究から、オオムギではHvGLK2転写因子の遺伝的な改変により、穂の光合成能力を高め、収量が多く、品質の優れた新品種の開発に役立つと期待されます。本研究成果は、2021年7月18日に「Plant and Cell Physiology」に公開されました。

◆研究者からのひとこと

 穂の白いalm1突然変異体はオオムギで最も美しい突然変異体のひとつで、類似のものは他の植物に見当たりません。本突然変異体の遺伝子解明では、海外の2つの研究グループと競合しました。岡山大学・環境生命科学研究科・博士前期課程を2018年に修了した服部桃子さんが中心となって遺伝子の研究を進め、光合成測定の専門研究室と連携し、いち早く成果論文を公表できました。発表雑誌号のカバーも飾りました。
武田教授

■論文情報
論 文 名:Mutations in a Golden2-like gene cause reduced seed weight in barley albino lemma 1 mutants.
掲 載 紙:Plant and Cell Physiology 62 (3): 447-457.
著  者:Taketa, S., Hattori, M., Takami, T., Himi, E, Sakamoto, W.
D O I:doi.org/10.1093/pcp/pcab001


<詳しい研究内容について>
穂の白いオオムギ突然変異体で光合成研究

<お問い合わせ>
岡山大学 資源植物科学研究所
教授 武田 真
(電話番号)086-434-1237 (直通)
(FAX)086-434-1249

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