国立大学法人 岡山大学

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“飲まないプロバイオティクス”へ向けて にきびのない肌で検出されることが多いアクネ菌株は黄色ブドウ球菌に対する生体防御機能を向上させることを発見

2021年10月28日

大阪市立大学
岡 山 大 学



◆研究のポイント

  • 「にきび患者の肌(にきび肌)で検出されることが多いリボタイプのアクネ菌株」は線虫の寿命を短縮、「にきびのない肌(健康肌)で検出されることが多いリボタイプのアクネ菌株」は線虫の寿命を短縮しないという相関関係が明らかに。
  • 「にきびのない肌(健康肌)で検出されることが多いリボタイプのアクネ菌株」によって、黄色ブドウ球菌への生体の抵抗性が向上することが分かった。
  • アクネ菌の健康肌関連株とにきび肌関連株を識別できる可能性が示唆された。

 大阪市立大学大学院 生活科学研究科の靏 綾乃(前期博士課程2年)、濱﨑 祐美(前期博士課程2018年度修了)、西川 禎一名誉教授、中台(鹿毛)枝里子教授らと岡山大学病院の冨田 秀太准教授(ゲノム医療総合推進センター)による共同研究グループは、ヒトの皮膚から分離された複数のアクネ菌株の生体作用について、モデル生物の線虫 C. エレガンスを用いて調べました。 その結果、「にきび患者の肌で検出されることが多いリボタイプのアクネ菌株」は線虫の寿命を短縮し、「にきびのない人の肌で検出されることが多いリボタイプのアクネ菌株」は寿命を短縮しないことを発見しました。これにより、アクネ菌株のリボタイプにおけるヒトに対する疾患(にきび)関連性と線虫への病原性(寿命短縮効果)の相関関係が明らかになりました。さらに、にきびのない人で検出されることが多いリボタイプのアクネ菌株(健康肌関連株)を用いて、皮膚に分布する細菌の1つである黄色ブドウ球菌への影響を調べたところ、健康肌関連株のアクネ菌は、宿主の生体防御系を活性化することにより黄色ブドウ球菌への抵抗性を向上させることがわかりました。
 本研究により、負の側面から語られることの多いアクネ菌の正の側面が明らかになるとともに、有益な皮膚常在細菌として「飲まないプロバイオティクス」として応用の可能性も期待されます。
 本研究の成果は、アメリカ微生物学会が発行する国際オープンアクセス誌『Microbiology Spectrum』(10月28日午前2時)にオンライン掲載される予定です。

◆研究者からのひとこと

 大学院生を中心とした生活科学研究チームが臨床比較ゲノムの研究者とタッグを組み、線虫をモデルとして用いることで、アクネ菌株のニキビとの関連の有無を区別できる可能性を示すことができました。多くの若者が悩むにきびの治療や健康肌関連アクネ菌株の新たな利用につながることを期待しています。
靏 綾乃    濱﨑 祐美   中台(鹿毛)枝里子教授

■論文情報
【発表雑誌】Microbiology Spectrum(IF=6.62)
【論 文 名】Nonpathogenic Cutibacterium acnes Confers Host Resistance against Staphylococcus aureus
【著 者】Ayano Tsuru, Yumi Hamazaki, Shuta Tomida, Mohammad Shaokat Ali, Tomomi Komura, Yoshikazu Nishikawa, Eriko Kage-Nakadai
【掲載URL】https://doi.org/10.1128/Spectrum.00562-21

<詳しい研究内容について>
“飲まないプロバイオティクス”へ向けて にきびのない肌で検出されることが多いアクネ菌株は黄色ブドウ球菌に対する生体防御機能を向上させることを発見


【研究内容に関するお問い合わせ先】
大阪市立大学大学院
生活科学研究科
担当:教授 中台(鹿毛)枝里子

【報道に関するお問い合わせ先】
大阪市立大学 広報課
担当:國田(くにだ)

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