国立大学法人 岡山大学

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IgG4関連疾患の診断における「類似疾患除外基準」の有用性を検証~厚生労働省研究班としての成果~

2021年11月30日

◆発表のポイント

  • IgG4関連疾患は、免疫グロブリンGという抗体の一種であるIgG4の産生が亢進し、全身のさまざまな臓器に腫瘤形成や線維化を引き起こす指定難病です。
  • IgG4関連疾患には、類似した組織像を呈する複数の鑑別疾患が存在し、特に“特発性多中心性キャッスルマン病”は、顕微鏡で観察して診断する際の鑑別が問題となっています。
  • 2020年に提唱した、IgG4関連疾患の「類似疾患除外基準」の有用性を、キャッスルマン病との比較において検証しました。

 岡山大学大学院保健学研究科の錦織亜沙美大学院生、岡山大学病院病理診断科の西村碧フィリーズ医師、学術研究院保健学域の佐藤康晴教授らの研究グループが、厚生労働省の研究班員とともに、IgG4関連疾患の診断における「類似疾患除外基準」の有用性について検証しました。本研究成果は11月11日、「Pathology International」に公開されました。
 IgG4関連疾患は、免疫グロブリンGという抗体のサブタイプであるIgG4の産生が亢進することが特徴で、全身の様々な臓器に腫瘤を形成したり、リンパ節が腫れたりする疾患です。一方、特発性多中心性キャッスルマン病(iMCD)は、全身のリンパ節の腫れや、発熱・倦怠感といった全身の症状を引き起こす疾患です。両疾患は、顕微鏡で観察した際に似た組織像を示し、iMCDの中にはIgG4関連疾患の診断基準を満たす症例も少なからず存在することから、鑑別診断が難しいといわれています。両疾患は薬物療法への反応性が異なるため、正確に診断することが重要です。
 そのような問題点を踏まえ、2020年にはIgG4関連疾患の「類似疾患除外基準」が提唱されました。この除外基準では、IgG4関連疾患で非典型的な臨床・組織所見の項目が述べられており、その所見がみられた場合には診断を見直す必要があると記されています。この除外基準の有用性は未検証であったため、本研究ではiMCDを対象にこの除外基準の有用性を検証しました。この除外基準が、広く普及することで、正しい診断につながり、これらの病気で苦しむ方々が適切な診断・治療を受けられることが期待されます。

◆研究者からのひとこと

 IgG4関連疾患とiMCDは非常に稀で不明な点が多い疾患であるため、診断が難しい場合が多くあります。今回検証を行った除外基準を多くの方に活用していただき、正確な診断および適切な治療の提供に繋げていきたいと思います。
錦織亜沙美 大学院生

西村碧フィリーズ 医師
 IgG4関連疾患には、iMCDを代表とし、似た組織像を示す疾患が複数あります。稀な疾患のため、診断経験豊富な医師は少ないのが現状です。本研究で検証した除外基準が、チェックリストのように広まることが、正しい診断の助けとなることを期待しています!
 除外基準を提唱され、本研究にも多大なご協力を頂きました、厚生労働省の研究班の先生方に感謝申し上げます。

■論文情報
論 文 名:Investigation of IgG4-positive cells in idiopathic multicentric Castleman disease and validation of the 2020 exclusion criteria for IgG4-related disease.
掲 載 紙:Pathology International
著  者:Nishikori A, Nishimura MF, Nishimura Y, Notohara K, Satou A, Moriyama M, Nakamura S, Sato Y.
D O I:10.1111/pin.13185
U R L:Investigation of IgG4-positive cells in idiopathic multicentric Castleman disease and validation of the 2020 exclusion criteria for IgG4-related disease

<詳しい研究内容について>
IgG4関連疾患の診断における「類似疾患除外基準」の有用性を検証~厚生労働省研究班としての成果~

<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院保健学域
教授 佐藤 康晴
(電話番号)086-235-6896
(FAX)086-235-7156

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