国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISHCHINESE
MENU

理論的に可能な新しい型の光合成炭酸固定経路を発見

2022年03月17日

◆発表のポイント

  • 植物の葉緑体などで二酸化炭素を代謝する標準型のカルビン・ベンソン回路と一部が異なる新しい型の光合成炭酸固定経路をコンピュータ計算により発見しました。
  • 発見した経路は、標準型のカルビン・ベンソン回路では説明がしにくい植物の現象をよく説明しました。
  • 発見した経路の知見は、地球温暖化の原因とされている大気中の二酸化炭素をデンプンなどの有用物質に効率的に変換する技術の開発における基礎知識として役立つことが期待されます。

 岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)の太田潤助教は、理論的に可能な新しい型の光合成炭酸固定経路をコンピュータ計算により発見しました。この研究成果は3月16日の日本時間19:00、英国の科学誌「Scientific Reports」のArticleとして公開されました。
 光合成炭酸固定経路であるカルビン・ベンソン回路は、二酸化炭素を有機物に変換する地球上で最も量的に重要な経路である一方、標準型のカルビン・ベンソン回路の働きに必要な特定の酵素を欠く植物でも生育するという一見矛盾する現象が報告されていました。発見した経路は標準型のカルビン・ベンソン回路と一部が異なる経路であり、この一見矛盾する現象とカルビン・ベンソン回路の働きが別の特定の酵素の働きに依存して増減することの両方をよく説明します。
 地球温暖化の原因とされている大気中の二酸化炭素からデンプンなどの有機物を植物などに効率的につくらせる技術の開発は、大気中の二酸化炭素濃度の低下と有用物質の増産につながるという点で社会的な意義を持つと考えられますが、発見した経路の知見は、その技術の開発における基礎知識として役立つことが期待されます。

◆研究者からのひとこと

普段、人や病原微生物の複雑な代謝経路をコンピュータにより読み解くための方法を開発し、いろいろな代謝経路の試し計算をしてみています。発見した経路は試し計算により数年前に求めたことがありましたが詳しく調べず放置していました。ところが、昨年の夏に、ふと、経路の詳細を調べてみる気になったり、生理的な意義付けへの糸口の情報が目に入ったりする偶然が重なり、お陰様で、論文にすることができました。この発見がSDGsの達成に役立つことを願っています。

■論文情報
 論 文 名:A novel variant of the Calvin–Benson cycle bypassing fructose bisphosphate
 掲 載 紙:Scientific Reports
 著  者:Jun Ohta
 D O I:10.1038/s41598-022-07836-7

<詳しい研究内容について>
理論的に可能な新しい型の光合成炭酸固定経路を発見


<お問い合わせ>
岡山大学 学術研究院医歯薬学域(医)
助教 太田 潤
(電話番号)086-235-7125 (FAX)086-235-7126

年度